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英語教育実践領域(ELT)

国際教養大学(AIU)には、言語と文化いずれの観点においても唯一無二の学修環境があります。授業に限らず、生活のあらゆる場面で英語が使われており、フォーマル・カジュアルを問わず英語に触れる機会が日常的に存在しているということです。学部生に用意された英語集中プログラム(EAP)では、経験豊かな教授陣が質の高い英語教育を実践する場面を目の当たりにすることができます。言語異文化学修センター(LDIC)には諸外国語の優れた教材が用意されており、個人学習、グループ学習に最適な環境を提供しています。AIUのキャンパスは、自身の英語運用能力を伸ばしながら、優れた英語教師になることができる最良の場所と言えるでしょう。ELTのカリキュラムは、英語教育実践理論の基礎を固めると同時に、自らが生涯を通じて自省的に英語とその文化を吸収し続ける姿勢を養っていきます。

英語教育実践領域で修得できる知識・技能等

  • 言語としての英語に関する深い理解
  • グローバル社会における英語の役割
  • 英語教育理論の理解と実践への応用力
  • 英語教育における研究手法
  • 情報の批判的分析力
  • 授業におけるコミュニケーション能力
  • 高度な情報発信力
  • 教育者としての自省力

領域の特色

特色1:フレキシブルな履修計画

ELTの教育課程は2年間を基本としていますが、現職教員などの場合は、通常の勤務を続けながら土曜日のみの授業を履修することで4年で修了することも可能です。

特色2:教員免許の取得

中学校・高等学校一種教員免許状を取得済みの場合は、所定の科目を履修することで修了時に専修免許状を取得することが可能です。また、教員免許状を未取得の場合でも、教職課程を同時履修することで、修了時に高等学校一種免許状を取得し、同時に専修免許状を申請・取得することができます。

高校での教育実習の様子

イングリッシュビレッジ 

文部科学省「スーパーグローバル創成支援事業」の一環として、ELTの学生を中心に展開しているのがイングリッシュビレッジです。本事業は、日本全国の中高生を対象とした2泊3日の集中英語研修プログラムで、年間を通じて開催されています。ELTで身につけた指導技術や、作成した教材などを実際の授業に適用する貴重な機会となっています。

研究・学会活動

ELTでは、学生の研究・学会活動を奨励しています。国際学会で発表するために必用な研究の方法、論文作成のスキルは、授業科目の中で学んでいきます。

2022年度の研究発表実績:JALT2022 in Fukuoka, Japan

  • Fostering Autonomous English Learning Through Speaking Activities in SHS
  • Promoting Interactive Classrooms in JHS English Lessons
  • Facilitating Interactions and Reducing Language Anxiety among Japanese HS Students
  • Focus on Listening and Facilitating Student Self-Assessment Using Dictogloss
  • Do People Have Same Images When Hearing Same Words?
  • Student-Centered Knowledge Building in Zoom Class

領域代表からのメッセージ

国際コミュニケーションとしての英語(EIL)という観点に立てば、英語を学ぶ生徒たちが将来コミュニケーションを図る相手は、英語母語話者というよりは、外国語あるいは第二言語として英語を使用している人々となるだろうことは想像に難くありません。英語教育が育成するべきは、日本人の特色を有しながらも十分に通じる英語を駆使する人材であることを意味していると言えるでしょう。

流ちょうさに重点を置くことは、新しい時代の日本の英語教育を成功させる重要な要素となります。正確さは、流ちょうさと同時に育成されるべきものです。まずは多くの語彙を習得することが必要であるとか、話したり書いたりできるようになるためには、文法を熟知しなくてはならないといったような古くからの妄信から抜け出す必要があるのです。生徒が流ちょうに英語を使えるようになるためには、meaning-focused learning(既習の言語項目を用いる学習活動)が不可欠ですが、日本の英語授業ではそれが不足しているのです。

「知ることとできることは似て非なるもの」ということわざが示すとおり、ELTにおいては、理論や指導技術をよく理解していることに加えて、それらを教室の指導で具現化する力を身につけていただきます。これこそが、ELTの特色なのです。

内田 浩樹 Hiroki UCHIDA
国際教養大学専門職大学院 グローバルコミュニケーション実践研究科 研究科長
英語教育実践領域長
教授

修了生からのメッセージ

生徒が学習過程で壁に行き当たるように、教師もまた授業実践に行き詰まりを感じる時期があります。何年か教員経験を積むと、教え方が固定化し、そのコンフォート・ゾーンに甘んじて留まるようになるものです。しかし教育に対する世間の要求は急速に変化しており、教師の仕事もまた、生徒に知識を授ける存在だけは成立しなくなっています。4Csと呼ばれるクリティカル・シンキング、クリエイティビティ、コラボレーション、そしてコミュニケーションといったスキルを伸ばすことが求められるようになりました。

私がそうであったように、コンフォート・ゾーンから抜けられずにいる先生は多いと思います。ELTでの理論の修得と実践の機会を通して、前述の4Csのようなスキルを伸ばしながら生徒が深く授業に取り組んでいくような授業をつくる方策を身につけていくことができます。ELTのすべての科目で、模擬授業やプレゼンテーションをしていきますので、学んだことを実践に応用できるのです。さらに、近隣の中学校や高校で授業実習したり、自分の実践研究を学会で発表する機会もあり、そこでは日本内外の先生方とアイデアを分かち合います。

ELTは実践に焦点を置いており、有効な指導法を現場に即した形で学んで行きます。私は教師として現場に戻り、かつてとはまったく違ったスタイルで授業をしている自分の姿に驚いているところです。ELTでの2年間は、私の教えることの楽しさを再確認する何ものにも代えがたい貴重な時間となりました。あなたがコンフォート・ソーンから抜け出してみたいとお考えなら、是非ELTで学んでいただきたいと思います。

三浦 俊太郎 Shuntaro MIURA(出身地:日本)

2005年3月大阪大学卒業
2021年4月国際教養大学専門職大学院 英語教育実践領域入学
2023年3月英語教育修士(専門職)取得
2023年4月秋田県立角館高等学校に勤務

AIUでの2年間の学びはとても濃く、人生において素晴らしい時間でもありました。入学時は、奈良県の公立中学校で教壇に立って3年が過ぎたところでした。その頃の私は、中学生に英語を教えながら、「生徒の英語スキルを伸ばすにはどうすればいいか」「もっと効果的な指導法はないものか」そして、「教えるっていったいどういうことなんだろう」と常に自問していました。そんな状態でしたから、これでもっと上手に教えられるようになるという期待感で心を躍らせながら入学したことをいまでも鮮明に思い出します。

ELTでの学びで最も大きかったものは、それまで疑ってこなかった思い込みからの脱却です。中学校で教壇に立っていたときには、「他の先生がやっているように教えることが大切」とか「英語の授業は教科書に忠実に」といった考えにとりつかれていました。こうした思い込みから抜け出すのは容易なことではありませんでしたが、理論を学び、模擬授業で実践することを繰り返す中で、次第にそうした昔ながらの指導法から離れていくことができたのです。私が古い指導を持ち出すたびに、教授陣やクラスメイトがそれを指摘してくれました。こうして、自分が誤った道を歩んでいることに気づいていくことができたのです。

私は現在、奈良県立国際高等学校中学校・高等学校で勤務していますが、中学校は、この4月に開校したばかりです。生徒は新しい学校で学ぶことに胸を膨らませていますので、ELTで私が学んだことを実践に移す絶好の機会と言えます。英語の学習を通して、世界の様々な側面について考える援助をしていくことができます。生徒にはもっと楽しんで英語を学んで欲しいと思っています。そのためには、授業を計画するときに私自身がクリエイティブにならなくてはなりません。そうあることで、私自身も教えることを楽しんでいけると思うのです。生徒から、授業が楽しくてたくさん学べたという授業コメントをもらうことがありますが、それが私の原動力ともなります。毎日がチャレンジの連続ですが、楽しくもあり、やり甲斐もあると感じています。これからもAIUでの学びを英語授業に生かしていきたいと思っています。

松元 梓 Azusa MATSUMOTO(出身地:日本)

2018年3月神戸市外国語大学卒業
2021年4月国際教養大学専門職大学院 英語教育実践領域入学
2023年3月英語教育修士(専門職)取得
2023年4月奈良県立国際中学校・高等学校に勤務

在学生の声

教師として英語を話すときには、流ちょうである以上のことが求められる。これがこれまでのELTでの最も大きな学びです。教師の発話が自然であっても、生徒が理解できなければ意味がありません。流ちょうでありながらも生徒が理解できる英語で話すためには、英語の膨大な知識、コミュニケーション・スキル、そして経験が必用です。ELTにはティーチャー・トークを伸ばすために必用なものがすべて揃っています。

池上 凛太郎(出身地:日本/出身大学:大阪教育大学)

ELTでは、様々な理論や教授法を批判的に議論し、それらを実践することで有効性を検証しています。授業に理論を生かすためには、教師自身が問題点を解決して様々な理論を融合していく能力を有していることが重要です。ELTで問題を解決していく経験を積み、自信を深めています。

Sarmin Farhana(出身地:バングラデシュ/出身大学:バングラデシュ国立大学)

居心地のいい楽なところから抜け出す。ELTはその手助けをしてくれました。コミュニケーションを通して英語を教えることについてほとんど何も知らなかったことを思い知らされた私でしたが、ELTには理論を実践に移す機会が豊富にあります。また、クラスメイトのアイディアが私の視野を広げてもくれました。ELTというコミュニティの中では、自分自身に挑戦することを楽しめているように思います。今は、自分が教師になっている姿をはっきりとイメージできるようになりました。

鶴田 リオ出身地:日本/出身大学:京都産業大学)

生徒のコミュニケーション能力を開花させられるような英語教師になりたい。そう思ってELTを選びました。ここでは、理論はもとより、実践的なティーチング・スキルを身につけることができます。ELTでの学びは期待以上のものでした。アクション・リサーチの手引き、大学、高校での授業実習に加え、コミュニケーション重視で展開するEnglish Villageでの活動を通して、未来の私の生徒のコミュニケーション・スキルを伸ばしていきたいと思います。

Ying ZHOU出身地:中国/出身大学:四川大学)

修了生の主な就職先

中学校・高等学校教員

  • 宮城県迫桜高等学校
  • 宮城県仙台第三高等学校
  • 大阪府立牧野高等学校
  • 石巻市立北上中学校
  • 秋田県立能代高等学校
  • 静岡県立浜松湖南高等学校
  • 長崎県立長崎北陽台高等学校
  • 北海道北見北斗高等学校

高等教育機関教員

  • 新居浜工業高等専門学校
  • 秋田工業高等専門学校
  • 国際教養大学
  • 福井大学

ほか、秋田県及び奈良県公立学校に復職、など