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【特別講演会】2021年度第2回「『サイバニクス』でポストコロナ時代の未来『テクノピアサポート社会』を切り拓く」(山海嘉之 筑波大学教授)

国際教養大学では、学生・教職員を対象として、「ポスト新型コロナウイルスを見据え、今、考えるべきこと、そしてこれからの社会のあり方」を共通テーマとして、各界を代表する国内外の有識者によるオンライン講演会をシリーズで開催しています。本講演会を通して、新型コロナウイルスが人類にもたらしている影響を多面的に理解し、今後のグローバル社会のあり方を考えることが目的です。

シリーズ2年目となる2021年度の第2回目として、10月15日(金)、筑波大学の山海 嘉之教授をお迎えし、「『サイバニクス』でポストコロナ時代の未来『テクノピアサポート社会』を切り拓く―サイバニクス:人間とサイバー・フィジカル空間の融合―」というテーマでご講演いただきました。

Zoom上でスライドについて説明する山海教授のスクリーンショット

医療とヘルスケアの今後のあり方について解説する山海教授(右上)

山海教授は、脳・神経科学、行動科学、ロボット工学、情報技術(IT)、人工知能、システム統合技術、生理学、心理学、哲学、倫理、法学、経営などの異分野を融合複合した新たな学術領域「サイバニクス」を創設し、Society 5.0/5.1を先導する世界的な研究者の一人です。筑波大学のサイバニクス研究センター研究統括、未来社会工学開発研究センター センター長を務めるほか、2004年に設立したCYBERDYNE株式会社では、身体機能を改善・再生・拡張・支援することができる世界初の装着型サイボーグ「HAL®」を開発するなど、少子超高齢化社会における様々な課題の解決に取り組まれています。

講演会では始めに、AI等のテクノロジーが、今後人間の新しいパートナーとなり、IoH/IoT(Internet of Humans and Internet of Things)により社会改革および医療改革が促進されると述べ、医療・ヘルスケアの未来として、病気の予防、早期発見、医療機関での治療、その後のリハビリ、ヘルスケアという一連の流れをつなぐサイバニクス・メディカルヘルスケアシステムについて説明されました。

HAL®の原理

人が体を動かそうとすると、脳から脊髄、運動ニューロンを経て筋肉に神経信号が伝わり、その際、皮膚表面に微弱な「生体電位信号」が体表に漏れ出してきます。この「生体電位信号」を皮膚に貼ったセンサーで検出し、意思に従った動作を実現します。この動作に同期して感覚系の情報が脳に戻り、このループが繰り返されて、神経と神経、神経と筋肉の間のつながりが強化・調整され、身体機能が改善・再生を促進していきます。

実際に事故や脳神経・筋系の疾患などで身体が不自由になった方の身体機能を改善する様子が、動画やデータを交えて紹介されました。これらの「サイバニクス技術」は、医療分野のみならず自立支援、介護支援、作業支援など多様な分野での活用が期待されており、今後は人間とサイバー空間が一層融合していくものと見られています。

質問した学生・教職員と質問に答える山海教授の画像

質疑応答の様子

質疑応答では、医療機器の発展が今後の平均寿命へ与える影響について、HAL®を実際に導入する際の価格帯について、科学者ではない本学の学生・教職員に可能な貢献方法についてなど、活発な議論が展開されました。

講演の最後には、次世代を担う学生たちへのメッセージとして、「異なる分野間で協働することが何よりも大切であり、複雑なルールなどの障壁を乗り越えて、社会を良い方向へ導いてほしい」と力強く語ってくださいました。

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