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国連ユースボランティア体験記(2022年度) ~鈴木 希授さん~

国連ユースボランティアプログラム(UNYV: United Nations Youth Volunteers)は、国際機関である「国連ボランティア計画(UNV: United Nations Volunteers)」により開発途上国に設置された事務所や現地政府機関で行う、大学生のためのインターンシッププログラムです。
2022年度にこのプログラムに参加した本学学生 鈴木 希授(すずき まれじゅ)さんの体験記をご紹介します。

  • 派遣先:ヨルダン(アンマン)
  • 派遣事務所:国連児童基金(ユニセフ)ヨルダン国事務所
  • 派遣期間:2022年9月~2023年2月

ヨルダンのペトラ遺跡の頂上に座る鈴木さんの写真
ヨルダンの世界遺産ペトラ遺跡の頂上にて

派遣先であるヨルダン(アンマン)について

ヨルダンは国土のほとんどが砂漠の国でありますが、渡航した9月から2月にかけて、首都アンマンは東京とほぼ同じくらいの気温でした。1月に雪が降ったことには驚きました。イスラム教の国で、お祈りや食生活等に独特の習慣があります。ヨルダンは比較的リベラルな国で、女性の肌を隠すヒジャブの着用や、お祈り、禁酒などは個人の判断に任せられているそうです。「中東」と聞くと治安の心配をされることが多いのですが、首都アンマンはとても安全な街です。現地駐在の日本人の方ともお話しましたが、スリなども含めて危ない目にあったことがある方はいませんでした。ヨルダン自体は安全な国なのですが、近隣諸国は治安が安定しない地域も多く、シリア、パレスチナ難民を多く受け入れています。ヨルダンに住んでいる人の3分の1が難民ともいわれており、増え続ける人口による若者の失業率などが問題となっています。

国連ユースボランティアに参加したきっかけ

私は高校時代、国際ボランティア団体に所属してフェアトレードコーヒーの開発に携わったり、ネパールの学校に図書館を建設する事業をリードしたり、タンザニア・ウガンダの少数民族の村で教育ボランティアをしたりしていました。そういった活動の中で地域密着型の支援やビジネスを通した社会貢献は経験できたものの、国連等の大きな組織の視点から国際協力に携わった経験はなく、挑戦してみたいという思いがありました。大学受験前にAIUが国連ユースボランティア(UNYV)の提携校になっていることを知り、ぜひ参加したいと思ったことが、AIUを志望した理由の1つでもあったため、応募要件を満たしてすぐに、迷いなく応募を決めました。

ヨルダンの首都、アンマンの中心街を高台から見渡した写真
ローマ帝国時代の面影が残る首都アンマンの中心街

担当した主な業務

「Gender Support Officer」という肩書で、ジェンダーチームに所属して活動しました。主な業務は、Gender Specialistのアシスト、難民キャンプや農村地域、砂漠地域でユニセフが行っているプログラムのモニタリング、プログラムの資金提供者やパートナー、受益者向けのレポートの作成、ウェブサイト・SNS用の記事の作成等です。許可を得た人しか入ることのできない難民キャンプにも訪問する機会が何度かあり、とても貴重な経験でした。

ジェンダーチームが月に一度開催している事務所内部での勉強会では、ファシリテーターである上司をサポートするため、会議室の予約やプロジェクターのセッティング、スライドや議事録の作成等を行いました。難民キャンプ等でのフィールドミッションでは、病院や産院、学校などを訪問し、女性や子どもに対してUNICEFが行っているプログラムが適切か、ジェンダーチームの視点から各プログラムを運営するセクションにアドバイスをしました。例えば、母親向けの子育て教室のプログラムに対して父親向けの教室の開催を提案したり、初婚・初産の年齢が低い難民キャンプ内でリプロダクティブヘルスに関する授業を、段階を踏んで幼いうちから行うことの重要性を主張したりしました。国際イベントに出席する機会もあり、国際ガールズデーに出席した際はヨルダン出身の女の子2名にインタビューを行い、彼女たちのメッセージをSNSに投稿しました。

国際ガールズデーに際して行われた “Arab Girls’ Summit”の会場写真
国際ガールズデーに際して行われた “Arab Girls’ Summit”にて

国連ユースボランティアの活動を終えて

大学院を出て2年以上の職務経験を積むことが必須な職種が多い国連で、学部生2年目でプロフェッショナルな方々と一緒にお仕事ができたのはとても貴重な経験だったと思います。外から見ているだけではわからない、国連や難民キャンプの内部を知り、ポジティブな面とネガティブな面の両方が見えたことで、将来の働き方を考え直す機会にもなりました。

今回の経験を、将来の夢や今後の学びにどのように生かしていきたいか

私がUNYVに参加した理由の1つは、将来の働き方について考えるうえで、国連が自分にあっているのかを確かめたいということでした。国連の長所としては、予算・人材・ノウハウが豊富で、大規模な支援が行えることです。一方で、その規模の大きさゆえに初動が遅かったり、長期にわたる支援が届きづらかったりするという現状も目の当たりにしました。例えば、私がヨルダンにいる時期に起こった隣国シリアとトルコでの大地震では、国連が緊急レベルを上げるか検討している間に多くのNGOや民間企業が人材の派遣や資金提供を決定しました。

また、フィールドに出て働く機会をもう少し多く持ちたいという思いも芽生えました。そのため、現在は、ビジネスを通して国際社会に貢献する道を模索したいと考えています。UNYVの活動を通して、この社会は「優しさ」や「人助け」だけでなく、様々な利害関係が絡み合って動いていることを知りました。支援者と受益者という関係ではなく、パートナーとして、助けを必要としている人たちのサポートをできる人になるべく、2023年秋からはAIUの交換留学制度でフランスのビジネススクールに留学予定です。

読者の皆さんにシェアしたいエピソード

週に1回でアラビア語のレッスンを受けており、渡航前はバラバラの線にしか見えなかったアラビア文字が読めるようになりました!アラビア語には日本語にはない表現やイスラム圏特有の言葉が多く、言語を通して文化を学んだいい経験でした。シリア人の先生のお宅で夕食をいただくことも多く、1人で暮らしているだけでは食べられないアラブの家庭料理をいただきながら、ヨルダンやシリアの情勢についてお話しすることができました。首都アンマンはほとんどのお店で英語が通じるため、正直アラビア語を学ぶ緊急性は低いのですが、レッスンを通して言語の勉強以上に学ぶことがあったように感じます。

アラブの家庭料理「マクルーベ」の写真
アラビア語の先生のお宅でいただいたアラブ料理「マクルーベ」

UNYV担当 佐藤 健公 特任教授からのメッセージ

本学は2016年度から、関西学院大学を基幹校とし9大学からなるUNYVプログラムに加入してきました。その間14名のAIU生が高倍率の選考試験を突破し、開発途上国でのボランティア活動に参加してきました。本学生が派遣された地域は、モンゴル(1名)、カンボジア(2名)、ルワンダ(1名)、バルバドス(3名)、スリランカ(2名)、ベトナム(1名)、ヨルダン(3名)、モザンビーク(1名)です。環境や文化、習慣が大きく異なる土地で、他国の社会人と5カ月にわたってボランティア活動を行うという経験は、派遣生はもちろん本学にとっても大変貴重な機会となったものと思います。本コンソーシアムは2022年度をもって解散することとなりましたが、これまでの本プログラムへのご支援に対して心より御礼を申し上げます。