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私の留学レポート:タイ・タマサート大学~松藤彩乃さん(1)~

国際教養大学では1年間の留学が必須となっています。語学留学ではありません。専門科目を現地の学生とともに履修し、本学での卒業単位の一部として認められる必要がある、「本気」の留学。学生が、それぞれ深めたい学問分野に応じて200以上ある海外提携大学の中から選択します。良いことばかりじゃない、ときには苦しいことや辛いこともあるのがAIUの「本気」の留学です。ここでは、そんな学生一人ひとりのストーリーを自身の言葉でレポートしてもらいます。

今回は、タイに留学中の松藤彩乃さんのレポート第1弾をご紹介します。

皆さん、はじめまして!福岡県出身で2023年春入学、グローバル・スタディズ領域の松藤彩乃です。

松藤彩乃さんの写真
タマサート大学の友人と「サンクチュアリー・オブ・トゥルース(The Sanctuary of Truth)」にて(写真右が松藤さん)

理論としての学びから実践へ

私はタイにあるタマサート大学政治学部(Faculty of Political Science, Thammasat University)に留学しています。この大学は、1934年に設立され、タイで最も歴史ある政治学教育機関の一つです。民主主義の理念を掲げ、政治、行政、国際関係、社会政策など幅広い分野でリーダーを輩出してきました。また政治学部が位置するタープラチャンキャンパス (Tha Phra Chan Campus) は、バンコク旧市街、チャオプラヤー川のほとりにあり、王宮や国会議事堂にも近い歴史的エリアです。

チャオプラヤ川の写真
バーンカチャオ(Bang Kachao)での一枚です。大きなチャオプラヤ川を船で渡ってサイクリングなどで自然を満喫しました。

AIU入学当初から、タイでの移民労働者の受け入れ制度を整備し、彼らの生活基盤の向上に貢献したいという目標を持って学んできました。特に地域発展論の授業で学んだ「コミュニティ形成の仕組み」や「すでにあるコミュニティへの関わり方」は、将来現地で国際協力に携わりたい私にとって大きな学びとなりました。当初は、移民政策が制度的に進んでいるドイツで学問的に理論を深めることを考えていました。しかしAIUでの幅広い学びを通して、知識を理論として学ぶだけでなく、現場で体系的に理解し、実践することの重要性を感じるようになりました。こうした背景から、現地の人々の暮らしや制度の実態に直接触れられるタイを留学先に選びました。

タマサート大学では、タイ語やタイの経済発展、東南アジアの歴史など、タイならではの科目を履修しています。特にタイの政治について本格的に学ぶのは初めてで難しく感じることもありますが、先生や友人が具体的な事例を交えて教えてくれるので、非常に充実した学びになっています。また、日本人として日本の政治体制や社会について質問を受けることも多く、自国について改めて考え直す良い機会にもなっています。

もう一つのタイ

多くの日本人が海外旅行先に選ぶタイですが、観光として訪れるのと、実際に生活するのとでは見える世界が大きく異なると思います。現地の人々の生活リズムや価値観に合わせて暮らす中で、毎日が新しい発見の連続です。街の雰囲気、物価、人々の温かさ、そして社会の中にある課題など、教科書では得られない「リアルなタイ」を肌で感じています。
特に印象に残っているのは、クローントゥーイ区(Khlong Toei)のスラム街を訪れたことです。留学前にこの地域の都市開発計画とスラムとの軋轢についてリサーチし、レポートを書いた経験があります。当時は資料やデータを通してスラムについて学んでいましたが、実際に足を運んでみると、想像していた姿とは大きく異なる光景が広がっていました。私は「スラム」や「貧困」と聞くと、どうしても「かわいそう」「改善すべき」といった感情が先に立ちますが、現地の人々は日々の生活を笑顔で過ごしていて、そこには確かに「幸せ」があるように感じました。その一方で、生活環境の不衛生さや経済格差の現実も目の当たりにしました。現在のバンコクでは富裕層や観光客向けの施設が次々と建設されていますが、観光だけでは見えない「もう一つのタイ」が存在することを実感しました。この経験を通して、国際協力とは何か、誰のための支援なのか、そして本当にその国を理解するとはどういうことかを深く考えさせられました。

ワット・アルン(Wat Arung)の写真
ライトアップされたワット・アルン(Wat Arung)
バンコクの中心地にあるバンコク最大のKhlong Toei SlumにStudy Tourに行った際の写真。
Study Tourで立ち寄ったバンコク最大のクローントゥーイ・スラム(Khlong Toei Slum)

タイ社会を「内側」から捉えるための挑戦

留学生活をスタートして3カ月が経ちました。タイでの生活を通して、「タイは日本に比べて自由だな」と感じることが多くあります。しかし同時に、それは自分がタイ人が作るコミュニティに深く属していないからこそ、見えない部分が多く、「外側」から見た自由さに過ぎないのではないかと気づきました。タイの社会にも、独自の文化や人間関係の中に暗黙のルールや価値観があり、それらを理解することが本当の意味で現地を理解することにつながると感じています。

私の留学の目標は、観光客の視点ではなく、現地の人々の視点から物事を捉えられるようになることです。そのためには、まだ言語面でも文化面でも学ぶべきことが多くありますが、残りの留学期間でできる限り現地に馴染み、タイ社会を「内側」から理解していけるよう努力したいと思っています。

これから留学するAIUの後輩や、AIUへの入学を考えている人へ

留学の準備をしているとき、そして実際に留学してから、「AIUでの学びが本当に生きている」と感じる瞬間がたくさんあります。それは授業の内容といった学習面だけでなく、日々の生活や心の持ち方といった精神面にも表れています。

正直に言うと、留学に行くまでの間、私はAIUでの生活に悩むことが多く、「他大学と比べて自分は遅れているのではないか」「立ち止まっているのではないか」と感じることもありました。しかし、留学先での経験を通して、「あの悩んだ時間があったから今の自分がいる」と実感できます。AIUでの悩みや不安は、決して無駄ではなく、必ずこれからの成長につながると思います。

国際センターから一言

留学開始後、たった3カ月しか経っていないのにも関わらず、多くの学びを得られており、松藤さんの目標に向かう姿勢の素晴らしさに胸を打たれました。入学当初から明確な目標を持たれていたこと、また他国での理論追及ではなく現地で学ぶという大きな決断をしたからこそだと思います。まだまだ序盤の留学生活。より学びを深め、実践していく松藤さんのご活躍を引き続き留学レポートで拝見できることをとても楽しみにしております。

英語版ウェブサイトでは、留学生たちの本学での留学体験記を「Student Voice」として紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。