秋田県の農山村には豊かな自然資源や食、伝統文化が存在します。秋田杉を主とする豊富な森林資源、世界遺産に登録された白神山地のブナ原生林、日本の原風景としての農山村の落ち着いた雰囲気、多種多様な温泉資源などは極めて価値の高い自然資源です。またナマハゲ、マタギ、かまくら、神楽、番楽、民話、民謡などに見られる伝統文化や、山菜取り・漬物作り・各種農村生活器具に見られる生活文化等、県内に於ける農山村の潜在的価値は、国内はもとより国際的レベルで認識されるべきものです。そしてこれらの資源は、近年、過疎や高齢化で衰退し、加えて平成の大合併によりコミュニティーとしてのアイデンティティー喪失の危機に直面している県内及び東北各県の農山村活性化のツールとしての持続可能な地域資源活用とサスティナブル・ツーリズムの無限の可能性を有しています。
地域環境研究センターでは、これらの自然環境・伝統資源の持続的管理運営に関する学術調査を実施し、その成果を学問的分野だけでなく、実際の地域活性に展開し、その発展に貢献することを目的としています。主な研究対象地域は大学所在地である秋田県ですが、将来的には近県の諸大学と連携をとり、広域的連携体制を構築し北東北地域の研究や研究員のネットワークを活用した国際的共同研究も視野に入れながら随時研究対象地を拡大していきます。
優れた自然・伝統・生活資源を再発掘し、それらの価値を損なうことのないように持続的に活用するためには、各種農村活性化事業の展開に伴う社会・経済・生態的アセスメントやそれら実施事業に於けるモニタリング調査等の研究が必要です。従来これら社会科学的調査が十分に行われることなしに各種活性化整備事業は展開されてきました。それら整備事業に費やした多額の経費と関係省庁の努力にもかかわらず、秋田県内及び東北各県の過疎・高齢化の流れに歯止めがかからないのが現状です。本センターは、今後の農山村活性化計画の策定に必要な基盤調査及び研究業務を包括的かつ多角的に国内外の研究者と協働で推進しつつ行政機関や町村と連携を取りながら県内の農山村活性に貢献します。
本センターの主要研究領域である持続的地域資源管理のような研究は、個人の見識、経験だけでは研究の包括性・多角性の観点からは限界があります。本センターは文化・研究背景の異なる研究者より構成されており、それぞれの切り口から多角的な視点で、秋田の自然環境、文化資源を再認識し、その価値の持続的活用とそれらの価値の普遍化に寄与することができるでしょう。