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本学学生が湯沢市のまちおこしインターンシップに挑戦

国際教養大学ではインターンシップを「学生が実際に働くことで組織のあり方や働く人々の考え方を学び、進路について考えるきっかけ」と捉えており、インターンシップ期間の長さに応じて単位を付与するなど、学生の積極的な活動を後押ししています。大学が仲介するインターンシップも一部にはありますが、多くの場合、学生自身がインターンシップ先を見つけてきます。
そんな意欲的な学生のひとり、石川日向子さん(2年次)は、2018年6月~10月にかけて、秋田県湯沢市の高茂合名会社(屋号:ヤマモ味噌醤油醸造元)にて地域貢献という切り口からインターンとして活動しました。学生が主体的にインターンシップ先を見つけ出し、活動した事例として、石川さん本人の話を通じてご紹介します。

このインターンシップに参加したきっかけは何ですか?

人口減少や景気低迷が続く秋田県で生まれ育った私は、中高生の時から「まちおこし」などの活動に興味があり、留学前のタイミングで「まちおこしインターンシップ」に挑戦したいと考えていました。大学のキャリア開発センターに相談したところ、秋田県湯沢市で面白い活動をしている経営者がいるとのことで、さっそく連絡を取りました。その後は予想以上に話がスムーズに進み、最初の連絡から1ヵ月もしないうちに、インターンシップに参加させていただきました。

どのような活動をしましたか?

高橋さんとの話し合いをパソコンでまとめる石川さんの写真

七代目の高橋さんと、石川さん

秋田県湯沢市の岩崎地域では、長年、地域を流れる皆瀬川を中心に住民が生活を営んできました。地域には、川にまつわる伝説や祭りなどの伝統行事があるにもかかわらず、川での遊泳が禁止され、さらに人口減少も進んだ現在は、伝説やそれにかかわる行事も廃れていく一方でした。そんな中、岩崎にあるヤマモ味噌醤油醸造元七代目の高橋泰さんが、地域の歴史や文化を後世に残そうと立ち上がります。高橋さんは海外渡航経験を通じて、アートによってコミュニティが再生・復興した光景を目の当たりにし、その事例をモデルに、自身が生まれ育った町も同じようにして、文化や習慣を残していきたいと考えたそうです。今回、彼が活動を開始するタイミングと、私がインターンシップに挑戦するタイミングが偶然合致したことで、この機会に恵まれました。そこで私は高橋さんの補佐として、岩崎の歴史や文化に関する情報を集めることになりました。最初は、地域の歴史や文化を表すアートギャラリーを創るということが第一の目的でしたが、様々な人々との出会いを通じ、活動のゴールが多様化していきました。
ひとつの目的や従来のインターンシップの型にとらわれず、学生が主体となって新たな課題を見つけ解決していく、有機的なインターンシップでした。

カフェの一角で高橋さんと話し合う石川さんの写真

七代目の高橋さんとは、活動の進捗や見通しについて何度も話し合った

特に印象に残ったことはありますか?

この活動の印象深い点は、学生である私が主体となって客観的に地域の現状を見つめ、課題とそれに伴う具体的な解決策を考えることができたということです。通常のインターンシップと比べ、様々な挑戦をさせてもらえました。
活動を始めて2ヵ月ほど経った頃に、経営者と社員をつなぐ、という新たな課題を発見しました。経営者の斬新かつ独創的な活動を、多くの社員に理解してもらうということは、想像以上に困難なものでした。しかし、社員向けの説明会や資料作成などの企画、運営を担当させていただいたところ、会社の中でも理解が進んだという手ごたえを実感することができました。
このように機転を利かせた柔軟な対応が求められるインターンシップを経験できたことや、自身で発見した課題を解決に導くことができたことなどは、将来の私の働き方に大きな影響を与えたと思います。

イギリス製アンティーク家具をセレクトしたカフェに集い議論する様子

石川さん主催の岩崎世代間交流で、地域住民の皆さんと地域の現状や未来について議論した

活動を通じて実感したことや伝えたいことがあれば教えてください。

当初の目標だったアートギャラリーの立ち上げ以外に、組織開発という課題も交えながら行ったインターンシップは、中高生の時に思い描いていた単なる「まちおこし」とは大きく異なり、そのギャップに戸惑うことも多々ありました。地域や町に活力を吹き込むという活動は、外部の人材による単発の取組では持続しません。外から新たな発想やアイデアをその土地に持ち込むことも大切ですが、同時に、地元に根付く価値観や習慣を尊重することも必要だと感じました。今回のインターンシップを通して、行動を起こす人間が地域住民と目線を合わせ、地域全体を巻き込んでいく重要性に気づくことができました。
国際教養大学には、率先してインターンシップに参加したいという学生が多くいますが、彼らが最初に直面する問題は、秋田県内で理想的なインターンシップ先を見つけられないことだと思います。確かに、都市部に比べると、先進的な活動を行う企業や、頻繁にインターン生を受け入れる企業は少ないかもしれません。しかし、このインターンシップでキーワードになった「ほしい仕事は、地元でつくれる」という言葉のとおり、学生自身の意欲次第で、活動の範囲や目標はいくらでも広げることが可能です。
地方には多くの問題点がある一方で、いまだに発見されていない、その地域ならではの魅力や、大きな可能性を秘めた人材も多く存在します。それらを客観的な視点で見つめ、地域の現状改善のために行動を起こすということは、とても面白く、やりがいのあることだと感じます。秋田県在住という点を否定的に捉えず、自分の行動次第で仕事をつくることができるということを伝えたいです。

本学の進路支援の取組の全体像については、こちらをご覧ください。