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国際教養大学 鈴木 典比古 学長が任期満了に伴い退任

秘書が学長に花束を手渡している写真

2021年5月31日、鈴木 典比古 学長が任期満了に伴い、国際教養大学 理事長および学長を退任しました。鈴木学長は2013年6月から8年間、本学の学長および理事長を務めました。

新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、鈴木学長はZoomで退任の挨拶を述べました。ここでは退任挨拶を抜粋してご紹介します。

退任のご挨拶

私が旧知の仲であった中嶋嶺雄初代学長の急逝を受け、国際教養大学の学長への就任の打診を受けたのは2013年の春のことでした。「AIUの発展は日本の教育界の発展を左右する重大事業なのだ」と覚悟を決め、2013年6月に就任いたしました。

就任して早々に政府のスーパーグローバル大学創成支援事業、(SGU事業)に応募し、本学を含め全国から37大学が選ばれました。SGU事業を通して、「TeachingからLearningへ」という世界潮流を意識しながら学修・生活環境の整備を進めてきたことのすべてが、国際教養大学が世界で通用する「質」を伴った大学になるためのプロセスであったことをご理解いただけると思います。

特に学修・生活環境の整備においては、教員や事務局などあらゆるチャネルから日々聞こえてくる学生諸君の多くの声を吸い上げ反映してきたつもりです。学生との対話集会や保護者会も良い想い出です。LDICを午前2時まで利用可能としたこと、図書館棟内に会話ができるクロス・ラウンジを創設したこと、学生会館と学生イニシアティブセンターも24時間利用可能としたこと、カフェテリアのメニューの増加、健康を意識したメニューの導入、宿舎への冷蔵庫の配備やホットカーペットの貸出し、夜間の見回りや照明を増やしたこと、そして老朽化したユニバーシティヴィレッジの建替えとこまち寮の改修も目処が立ちました。小さなことから大きなことまで、この大学の成長は学生諸君や教職員の声や想いを具現してきたと思っています。

また、私が学生や教職員の皆さんと同様に非常に感謝しているのは、地域の方々と同窓会です。AIUが毎年200回以上の地域交流を実施してきた背景には快く受け入れてくださった地域の方々の存在が欠かせませんでした。そのほかAIUサポーターズクラブの皆様、各地域の商工会議所や経済同友会、県内の各市町村やAIU竿燈会を支援してくださった皆様など、私達はそうした方々への感謝の気持ちを忘れてはならないと改めて思います。また同窓会が2019年に初めてReunionを開催した際は会場に溢れんばかりの卒業生が集まり、皆「母校のためなら何だってやります」という熱いAIU Spiritを語ってくれました。彼ら卒業生は今もパイプ委員会や就職支援など後輩の皆さんのために労を惜しまないAIU Communityにとってかけがえのないメンバーです。

順調に見えるAIUの8年間においても、常に悩みとともに生きてきました。そんな時に必要なのは「自分との対話」です。自分が望むもの、信じるもの、価値があると思うものは何なのか考え抜くことです。しかし、自分との対話というのは、自分が欲することだけに耳を傾けることではありません。常に社会の中にいる自分を意識し、社会との対話も同時に行わなくてはなりません。皆さんには悩んだ時でも、「今、ここ、自分」を優先するのでなく「いつか、どこかで、他者のために」という志を持って欲しいと思います。

英国のTimes Higher Educationが発表する日本の大学ランキングで、歴史の浅い小さな公立大学である本学が非常に高く評価されていることは誇るべきことです。一番誇りに思っているのは、Student Engagementで1位であることです。Student Engagementは教職員の努力と仲間との関わりによって創発される学生の意欲、心構え、活動のすべてを包含する芸術とさえ言えるものであり、AIUはそれを生み出す環境として間違いなく日本一であると信じています。

私がAIUを去るにあたり、皆さんの学びへの意欲を生み出すために役立つであろうものを2つ残して行きます。一つは今年度導入された新しいカリキュラムです。サステナビリティや科学技術分野を加えるとともに、学びの体系化をはかりました。より学際的な学びが可能になり、様々な「知」を統合する必要性や「知」を統合する喜びを感じ取ることができるものと期待しています。もう一つは新カリキュラムと併行して導入する「応用国際教養教育」です。個々の授業において、「知」を統合しないといけない場面、またキャンパスの外に出て実社会の課題に直面し、深く考え内省する場面を多く設定することで、「知」を応用する機会と、自身の「全人格」を応用する機会を増やし、知的にも人格的にも成長を促す手法です。私はAIUに来て学生諸君の持つ積極性や利他の精神に大変感心しましたが、AIU生の持つこうした特性を教育の仕組みの中に取り入れて伸ばして行くことで、本学はより大きく前進できると信じています。

来月からはいよいよモンテ・カセム新理事長・学長をお迎えします。未来はいつも歴史の延長線上にあると言いますが、これまで本学の理事としてのご経験も長く本学のことを熟知されているカセム先生は、これまでの歴史の上にAIUの未来を描くには最適な方です。国際教養大学が、世界に通用する、いや世界標準をリードする時代をカセム新学長と皆さんで築いて行って欲しいと願っています。

混迷する現代社会の蒙を啓いて世界をけん引するグローバルリーダーを輩出し続けている本学の学生諸君にとって、最も重要なものは「学ぼうとする意欲」と「人としての心構え」です。新型コロナウイルスをはじめいかなる困難が訪れようとも、常に学生一人ひとりの努力の総和が国際教養大学の姿であることを忘れないでいただきたいと思います。

これまで8年間、国際教養大学ならびに鈴木典比古を支えてくださったすべての皆さまに厚く感謝を申し上げ、私の最後のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

国際教養大学 理事長・学長 鈴木 典比古