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Faculty Voice Series Episode 11. 内田 浩樹 教授

学生のみなさんが教室で見る教員の姿、そして、本学を目指す受験生が、パンフレットや著書から知る教員の姿は、ほんの一面でしかないのかもしれません。
そこで、Faculty Voice Seriesをスタートし、本学の教員の真の姿に迫るエッセイをリレー形式でお届けすることにしました。専門分野や研究内容だけでなく、趣味、人生観、若き日の想い出など、様々な角度から語られるそれぞれの教員の人柄に、ぜひ触れてみてください。

Episode 11.は、内田 浩樹(うちだ ひろき)教授です。

Click here for the English version of the message.

愛知県出身の内田教授は、1989年に南山大学の文学部を卒業すると同時に、愛知県の公立高校で英語教員としてのキャリアをスタートさせました。教員生活6年目に英語教育についての学びを深めるために働きながら大学院で学び、1996年に南山大学で修士号(英語教育)を取得しました。2009年4月に本学専門職大学院に着任し、2012年から英語教育実践領域代表、2017年からはグローバル・コミュニケーション実践研究科長を努めています。

内田教授のプロフィール写真

鉄の輝き

小さな子どもは、「大きくなったら…」とよく言う。自分が選んだものなら何にでもなれると信じている。とても幸せな時期だ。

1歳の頃の内田教授の写真

1歳頃:未来は無限大だった

大人になることで、自分の可能性が広がっていくと私自身も思っていた。しかし、現実は違う。例えば、中学校の部活動で水泳部を選んだ瞬間、私は野球やバスケットボールに触れる機会を失った。高校2年生で文学部受験を選択したことで、エンジニアや医師になる道は途絶えたのだ。後発でも大成する天才や類い希なる努力家を除いては、人生の選択とはそういうものだと思う。

歳を重ねるということは、自分の可能性がひとつずつ消去されていくことを意味する。もちろん、私は若い頃にそんなふうに考えたことはなかった。ただ、心の赴くままに進む道を選んできた。もし、その頃に今のような考え方ができていたらどうだっただろう。自らの選択のひとつひとつが、自分の人生の可能性を放棄していく過程だと知っていたら今の私はもっと違う存在になっていただろうか。この問いにはあまり意味がない。第一に、若い人はそんなふうに慎重になれるはずがないからだ。内から溢れ出る衝動や情熱で動いてこその若さだ。

22歳の内田教授の写真

22歳:なんでもやってみた頃

次に、私は「もし」という言葉を好まない。裕福な人もいれば、そうでない人もいる。健康で強靱な体を持って生まれる人もいれば、そうでない人もいる。機会は平等だが、スターティングポイントは不平等なのだ。他者と比べることは、自身の成長を促す重要な要素だ。比較することなしには、自分がどれほど優れているか、また劣っているかを知ることはできない。しかしどうだろう。この比較という行為は、あなたという人を完全に破壊してしまうほどのインパクトを与える危険な行為でもある。どれほど努力しても遠く及ばないライバルが、次々と視界から消えていくのを繰り返し経験すると、次第に自分自身が価値のない存在だと思えてくる。私は30歳になった頃にこうした気持ちになった。

19歳の内田教授の写真

19歳:一人旅して人生について考えた

努力では超えられない壁をはっきり認識したとき、つまり、自分の能力に限界があると思い知らされたとき、私はすべての意欲を失った。そんな折に、ある人がこんなことを言った。

「鉄には鉄の輝き方がある。」

私は、頭の中に日本刀の姿を描いた。子どもの頃に名古屋城だかどこかで見た、長く弧を描いた美しい太刀。その見事な刃文と背筋の凍るような鋭い輝きを思い出していた。
鉄は、金やプラチナと違って錆びやすい。だからこそ毎日磨かなくてはならないのだ。うちひしがれて無為に時間を過ごしている場合ではないと思った。金になろうと夢見ていた自分の姿を恥じた。自分が目指すべきは、輝く鉄であり続けることだったのだ。

30歳の内田教授の写真

30歳:鉄の輝き方を考え始めた

私は、他者と自分との比較をしなくなった。その代わりに昨日の自分と比べる毎日になった。昨日から一歩でも成長できたかと自分に問うことは、実は他者と比較する以上に辛いことだ。自分に嘘はつけない。ただ、思い悩むことはなくなった。自分のやるべきことに全力で集中できるようになった。

さて、私の3歳の息子は、「大きくなったら仮面ライダー」になると言っている。私の大切な仕事は、彼が最も必要とするときに「鉄には鉄の輝き方がある」と側でつぶやくことなのだろう。

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