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AIU✕秋田県内企業連携プロジェクト(1):「EKIBEN ToriMéshi Bento」プロジェクトがCJPF2023準グランプリを受賞

コロナ禍で諦めたフランス行き

AIU:フランス現地には行きましたか?

仲田:ストアの開設に向けて5人チームのうち4人が2班に分かれて渡仏する予定でした。1班目の2人がフランスから帰ってきたあと、私たちの班がフランスに行く予定だったんですが、ちょうどオミクロン株が増えてきた時期でした。出発の日、秋田空港に向かう車の中で八木橋社長から電話がかかってきて「だめだ、引き返そう」という判断になり、諦めざるを得なかったです。現地の店舗が見られなかったのはちょっと心残りです。

八木橋:1班目が現地に行って、問題点が明らかになって、それらを解決するために仲田さんたちが行く予定だったんですが、ストップせざるを得ない状況になりました。

AIU:企画したものがお客さんにどのように受け止められたのか、反応やフィードバックはどんなものがありましたか?

仲田:関わり方が全部リモートだったことと、現地の反応が見えないところに、個人的にもどかしさはありました。一方で、予想していなかった数々のメディアやYouTuberなどがポップアップストアに来てくれて、「美味しかった」と動画をあげてくれたり、現地にいる友人が「お店行ってきたよ」と伝えてくれたりして、実感が湧きました。パリのリヨン駅は、私にとっても馴染みのある場所だったので「ここにあるんだ」となんとなくイメージがありつつも、具体化されないなかでそういった反応を受けたのは良かったと思います。

(左)ポップアップストアのオープン初日の集合写真。左から4番目が花善 八木橋社長
(右)八木橋社長の現地での接客様子

不確実な時代に

八木橋:もちろん失敗した部分もあります。ただ、学生たちは色々考えてきてくれて、絵を描いたり、プレゼンしてくれたり、案を出してくれたりしました。最終的には自分たちでできることをやって色々模索したうえでの失敗だったので、悔いはないですね。

仲田:コロナ禍に物価高、戦争も相まって輸出コンテナがとんでもなく値上がりするなど困難も多かったです。そんな中でも八木橋社長は「できない」ところに目を向けるのではなく「その都度できることで、何をしようか」と、前向きにさせてくれました。できないことを羅列するのは簡単です。ただ、このプロジェクトに関わった2年間、社長からはできることを積み上げていくという姿勢を教わりました。だからこそ成長につながったと思います。
社長は「学生の意見が100%取り入れられるとは限らないけれど、お互い真剣に考えることに意味があって、学生たちの一つひとつのアイディアは会社にとってもプラスになるので、遠慮なく意見を出してほしい」と、「それらがうまくいくかいかないかは、学生のせいではなく最終的には会社の判断になるので、どんどんアイディアを出してほしい」とおっしゃったので、後押しになったと思います。

八木橋:コロナ禍もそうですが、AIUの学生たちが集まってくれたとき、実は出店が決まっていたわけではなかったんです。当時はまだパリ・リヨン駅構内での出店を目指して、フランス国鉄(SNCF)が主催する出店コンペに参加する段階で、まずコンペで勝てるかどうかというところから始まったのです。学生たちも、よくこんな不確定要素が多いなかでやろうと思ったなと感心しましたね。

「駅弁」という文化として

八木橋:今回の「CJPFアワード2023」では、グランプリを受賞した大手企業に負けたとは言え、日本酒や忍者などをテーマにした優秀賞のコンテンツを抜いて「駅弁」が準グランプリに選ばれたのはとても嬉しいです。もちろん、すべてが日本のカルチャーとして素晴らしいものです。ただ「駅弁」が日本のエンターテインメント、文化として認められたこと、花善とか鶏めしという話ではなく「駅弁」そのものがきちんと認められたということを、取り組んでくれた学生たちにも伝えたいですね。
ポップアップストアは2021年11月から2022年5月まで運営しましたが、プロジェクトとしては補助金などの関係もあり、いったん2021年の12月に解散しています。なので、学生たちはみなさんゴールを分からずに終わった感じになってしまいました。もっと一緒に手を取って、喜ぶなり反省するなりしたかったですね。ただ、そうやって皆でやってきたことが認められ、今回受賞できたのだと思います。

ポップアップストアで販売した秋田弁当(左)と鶏めし弁当(右)を見せるフランスのスタッフ

ここでしかできない経験

仲田:私は「地域にはもっと魅力がある」、「地域でしかできない国際的な経験がある」ことをすごく感じました。4年間とりあえず秋田にいて、地域とのつながりを持たないまま卒業、就職し、秋田から離れても不思議ではなかったです。そんな学生たちが地域の企業と手を組んで活動して、地域企業の方々から「いつでも帰っておいで」と言ってもらえる関係性が生まれたということは、AIUが秋田にある価値となり、それを実感できたプロジェクトだったと思います。「秋田では何もできない」、「秋田には何もない」と言うのは簡単です。ただ、キャンパスから一歩踏み出せば、大館、湯沢、雄和などの企業でしかできない様々な取り組み、経験と実践があり、そこでしか得られないスキルがありました。秋田でそういった経験ができた者として、私もこれから次の世代にバトンを渡していきたいと思います。

八木橋:多分、感じている人は感じていたかもしれませんが、県内企業にとってAIUってすごく距離感があったんです。ただ、このような活動を通して、その距離が徐々に近くなっている。少しずつ一緒に手を組めば、新しい景色が見えるというか、地元の大学としての価値も高まっていくと思います。
私と仲田さんの夢は、地元の秋田県で就職するとか、秋田というものを自慢して外に就職するとか、秋田というものを知って動ける学生を増やすことです。

プロジェクトは次のステップへ

八木橋:このプロジェクトをきっかけに、『Province d’Akita Bento』に詰め込んだ稲庭うどん、いぶりがっこなどのメーカー数社と仲田さんたちのAIUチーム、秋田県が連携する新しい取り組みが実現しました。AIUとの結束によって世界最大規模の食品展示会『SIAL Paris 2022』で、稲庭うどん、いぶりがっこなど秋田県産品を紹介する秋田県ブースの出展に繋がりました。いぶりがっこに関しては輸出なんてしたことない、というレベルでしたので、これはすごいことです。今度は仲田さんがリーダーになって、マーケティングとプロモーションを担当してくれました。

仲田:プロジェクトが終わってからも繋がりが生まれています。今回のプロジェクトを通してクラスター輸出が始まったこともそうですし、八木橋社長には今でも仲良くしていただいています。
行政支援事業になると、やはり予算の関係で単年の活動になることが多いです。ただ、プロジェクトが終わっても、関係は続きます。プロジェクトに参加して良かった、関わりをもって良かったということを他の学生にも伝えつつ、地域社会におけるネットワークを広げていけたらと思います。まだまだやれるところも見えてきているので、今後もそれらを活かしていきたいです。

この企画記事はAIU✕秋田県内企業連携プロジェクト(2)秋田県産品ブースを世界最大級の飲食博覧会「Sial Paris 2022」へ出展  に続きます。稲庭うどん、いぶりがっこなど秋田県産品をフランス市場へ紹介するプロジェクトに参加した本学学生の活躍もぜひご覧ください。