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私の留学レポート:シンガポール・南洋理工大学~山本 樹延さん(1)~

国際教養大学では1年間の留学が必須となっています。語学留学ではありません。専門科目を現地の学生と共に履修し、本学での卒業単位の一部として認められる必要がある、「本気」の留学。学生が、それぞれ深めたい学問分野に応じて200以上ある海外提携大学の中から選択します。良いことばかりじゃない、ときには苦しいことや辛いこともあるのがAIUの「本気」の留学です。ここでは、そんな学生一人ひとりのストーリーを自身の言葉でレポートしてもらいます。

今回は、シンガポールに留学中の山本 樹延さん(やまもと きの)さんのレポート第1弾をご紹介します。

こんにちは!グローバル・スタディズ課程の山本 樹延です。北海道出身で2021年春入学、2023年8月からシンガポールの南洋理工大学(Nanyang Technological University)に留学中です。

山本 樹延さんの写真
山本 樹延です!こちらの「The Hive」はNTUを象徴する建物です。蜂の巣のような構造をしています。

シンガポールを選んだ理由

AIUの基盤教育で学んでいたころから、社会学や社会政策学に興味がありました。それらは「私たちが生きている社会」を考察の対象とし、生活を取り巻く社会のしくみを紐解き、よりよい社会のあり方を模索していくような学問です。学ぶ内容や課題が、社会によって大きく影響されるものでもあります。シンガポールは先進的な都市国家、急速な経済成長、多民族共生社会として知られています。建国60年に満たない歴史のなかでシンガポールの発展を支えてきた柱のひとつが、その機能的かつ効率的な社会のしくみです。一方で、その発展に貢献した社会のあり方は、現在のシンガポール社会が抱える問題にも繋がっていきます。特殊な発展の背景を持つシンガポール社会で、それらの学問を勉強したいと考えました。

シンガポールの都市を再現した模型の写真
シンガポールの都市の再現模型です。国土を一望することでシンガポールのコンパクトさを改めて感じるとともに、都市発展のこれまで・これからについて考えさせられました。

留学先の大学紹介

南洋理工大学は名前から理工系の学部しかないと想像されがちなのですが、人文学から社会学、ビジネスに至るまで幅広い学問分野の教育を受けることができます。社会学の授業はシンガポールと深く関連づけられているものが多く、教室で学ぶ内容と生活を結びつけながら社会への理解を深められる機会だと思い、留学先として選びました。また、南洋理工大学には東アジア・東南アジア各国を中心に素晴らしい学生や教授が集まっています。授業内外で積極的に交流し、様々なことを吸収して成長したいと思っています。

シンガポール国立博物館の写真
シンガポール国立博物館(National Museum Singapore)はシンガポールの歴史・文化に触れられる場所です。

ディスカッションを通してシンガポールの社会問題の理解を深める

大学では主に社会学部の科目を履修しています。現在のシンガポール社会が抱える諸課題を様々な切り口から学び考えることに興味があり、人口、社会格差、人種・民族、環境についてシンガポール社会との関わりという観点から勉強しています。例えば、私の履修している人口学の授業では、人口の移り変わりやそれに伴い生じる人口問題を学び、シンガポールの実情と結び付けてディスカッションをしています。具体的にはシンガポールの出生率低下による少子高齢化問題や、人口の3割弱を占める移民問題などについて話し合いました。

特に印象に残った出来事

シンガポールに来て驚いたことは、人種・文化の多様性です。シンガポールの特徴として、それぞれの人種・民族コミュニティが独自性を保ったままひとつの場所に共生していることが挙げられます。街を数ブロック歩くだけで全く違う雰囲気になるのが印象的でした。また、大学の食堂や街のホーカーセンター(飲食の屋台や店舗を集めた屋外複合施設)には、当たり前のように複数の文化の味があります。このような人種・民族の独立と調和をどのように維持しているのか、またシンガポール人としてのアイデンティティをどのように構築しているのか、その過程を知りたくなりました。

フードコートの写真
寮近くのフードコートです。中国、インド、マレーシアを始め様々な国籍の料理があります。NTUでは講義棟や寮ごとにフードコートがあり、日々色々な場所を巡って食事をしています。
ナシゴレンの写真
ナシゴレンというマレーシア料理です。

留学で達成したいことや意気込み、日本愛好会への参加のきっかけ

留学中は、シンガポールや周辺の東南アジア諸国での学び・交流を通じてシンガポールへの理解を深めたいと考えています。具体的には、南洋理工大学の日本愛好会(NTU Japanese Appreciation Club)という学生団体での交流活動や、休暇期間を利用した他の東南アジアの国々での滞在を通して知見を得たいです。

日本愛好会は主にシンガポールの現地学生によって運営されているのですが、私もサブ構成員として参加しています。私はPublic Relations(PR)の部門で、主に外部からの日本人見学者の対応と彼らと現地学生の交流サポートのために活動しています。シンガポールの学生がどのように日本を見ているか知りたいと感じたこと、また、日本とシンガポールを繋げるようなプロジェクトに微力ながらも貢献したいと考えたことをきっかけに活動に参加しました。

東南アジアの中心にあるという地理的条件の良さもシンガポールを留学先として選んだ理由のひとつでした。その利点を活用して、学期中や休暇期間に積極的に東南アジアの国々を回りたいと考えています。机の上だけでしか知り得ることのなかったそれぞれの国の生活のあり方や空気感を自分の目で見てみたいです。

ライトアップされた木のモニュメントの写真
中秋祭の時に有名なシンガポールの庭園「Gardens by the Bay」を訪れました。まさにこれが想像していたシンガポール!という雰囲気のある場所でした。
ホーチミンの街並みの写真
学期中にベトナムのホーチミンへ行きました。シンガポールとは全く異なるホーチミンの街並みから、それぞれの国での文化・歴史的背景の影響の大きさを感じました。東南アジアの中の多様性に目を向けるきっかけとなった旅でした。

これから留学するAIUの後輩や、AIUへの入学を考えている高校生へ

実は中学高校時代に私が最も苦手だった科目は英語で、AIU入学時も実践的な英語のスキルはかなり不足していた状態でした。留学や海外に興味があり英語技能が高い人が集まりやすいAIUにおいて、私のようなタイプは珍しかったかもしれません。ただ、英語集中プログラムの「EAP1」という初級のクラスからスタートし、現在の留学までたどりついた身としては、入学時の英語スキルの差は留学先の選択にそれほど影響しないと考えています。足りない部分をどうやって伸ばすことができるのか、また他の部分でどのように補っていくのかという試行錯誤は、AIUでも留学先でも重要だと感じています。

国際センターから一言

山本さんが特に印象に残ったこととして挙げてくださった「それぞれの人種・民族コミュニティが独自性を保ったままひとつの場所に共生している」というシンガポールの特徴が、そのままシンガポールの魅力でもあると思います。小さな国の中で、様々な人種・民族が共通語である英語を介して活動しているところは見習うべき点も多いことでしょう。観光地として人気のあるシンガポールですが、短期滞在では触れることのできないシンガポール文化を、ぜひ次回のレポートでも教えてください。

英語版ウェブサイトでは、留学生たちの本学での留学体験記を「Student Voice」として紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。