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AIU×秋田県内企業連携プロジェクトレポート(3)秋田の日本酒をフランスへ

国際教養大学では、2021年から秋田県および県内企業と連携し、秋田県産品の輸出拡大についてのサポートプロジェクトを行っています。

2023年度は、本学学生の6名が秋田県と合名会社鈴木酒造の連携プロジェクトに参加しました。プロジェクトの目的は鈴木酒造の発泡清酒「ラシャンテ」の販路拡大支援のためです。5月から活動が始まり、9月にフランスで開催された秋田県主催の商談会で使用するPR資料の作成を行いました。また留学生へのテストマーケティングを学内で実施したほか、フランスに留学中の学生が現地でもテストマーケティングを行い、ペアリング(食べ合わせ)調査や鈴木酒造が予定していたフランスでの営業活動に向けたマーケティング調査も行いました。
今年度のプロジェクトに参加した小野 知優さん、霍見 竜弥さん、小林 龍二さん(いずれも2020年入学)の声をご紹介します。

学生の声

小野 知優さん:フランスで行われる商談のためのパンフレットと動画の作成を行いました。資料作成の目的を明確化し、現地で商品の魅力が伝わるようにフランスでの商品の需要を調査しました。同時に商品調査では、フランス人留学生を対象に、「ラシャンテ」を飲んだ際の印象やおすすめの食べ合わせなどの調査も行いました。今回のプロジェクトを通して学んだことの一つは、国を超えて複数の作業を様々な関係者の協力を仰いで、期間内に終わらせなければならないというスケジュール管理の大切さです。資料作成では文章や動画、フランス語の翻訳などの作業をチームで役割分担するためにミーティングを行い、作業が進むよう計画しました。プロジェクトメンバーと意見を出し合い、適宜教員に相談することで、円滑に作業を進める工夫を学びました。また、今回のプロジェクトを通して、日本酒についてのフランスでの需要や作り手の思い、マーケティング手法など複数の視点から考えることができ、自分の知らなかった大学周辺地域の魅力の再発見と日本文化について深く考えることができました。

テストマーケティングにも熱が入ります(小野さん)
      制作したパンフレット例

    制作したYoutube動画

霍見 竜弥さん、小林 龍二さん:私たちはフランス留学中に、パリとトゥールーズで日本食レストランや日本酒取扱店を訪問し、鈴木酒造の日本酒の営業及びフランスにおける日本酒市場について調査をしました。

トゥールーズでは、営業、マーケティング調査に加え、試飲会を実施し、「ラシャンテ」へのフィードバックをいただきました。結果としてトゥールーズの販売団体で日本酒を扱っていただくことが決まり、秋田の日本酒をトゥールーズで初めて市場に流通させることができました。フランスという異なる場所で日本文化を見つめ直す経験をすることで、改めて日本酒や秋田の文化の力強さを実感しました。

パリの市場調査では、ただ生活しているだけでは知らなかったであろう現地の人々の意見や文化にも触れることができました。フランス人消費者は日本人とは好みが大きく異なり、自分たちが想像もしていなかった部分に興味を持ってくれることもありました。特にマーケティングの戦略を考える上で、フランス人の好みに寄せてコンセプトを作ったところ、予想よりも受け入れてもらえなかったのですが、逆に日本らしさを強調したパンフレットを作成すると、途端に興味を持ってくれたりと、自分たちが持つ認識との違いを強く感じました。異なる文化の人と関わり、その人たちに受け入れてもらえるようにするには、ターゲットのニーズに合わせたアプローチが重要なのだと身をもって感じる機会となりました。

トゥールーズSake Clubでの様子(右から小林さん、霍見さん)

企業インタビュー

プロジェクトに参加した鈴木酒造の鈴木 陽子さんに今回のプロジェクトについて伺いました。(聞き手:AIU地域連携チーム)

AIU地域連携チーム(以下、AIU):どのような経緯でこのプロジェクトに参加しようと考えましたか。

鈴木酒造:2022年度のAIU×秋田県内企業連携プロジェクトに参加していた稲庭うどん小川さんからプロジェクトのことをお聞きし、その後秋田県庁・観光文化スポーツ部 食のあきた推進課の方から案内をいただき参加いたしました。

AIU:今まで市場拡大を目指す中で困難に感じた点はありますか?

鈴木酒造:2022年の秋にインポーター(輸入業者)と出会えたものの、フランスの日本酒市場は供給過多の状態で、その中のone of them になることを危惧しておりました。そこで、この事業では他社との差別化を図りたく、通常の日本酒ではなく発泡清酒である「ラシャンテ」を支援商品として選びました。

AIU:本プロジェクトに参加して良かった点、今後の期待と展望についてもお聞かせください。

鈴木酒造:本事業では秋田で活動してくれている学生、留学中の学生それぞれが広報用の資料作りやマーケティングに精力的に活動してくれました。パリでサポートしてくれた輸入業者の代表も、トゥールーズで販売まで繋げた学生の活動に感心し、レポートを読んでみたいと関心を持ってくれるほどでした。作成していただいたパンフレットや動画は、現在も現地営業担当が新規開拓・販促に活用しており、大仙市にある蔵では海外観光客へ帰国後の購入先の紹介に利用させてもらっています。酒蔵のストーリーや「ラシャンテ」の面白さ・魅力をインポーターも含め、多くの方に知っていただけるきっかけになりました。先日もフランスから「ラシャンテ」の注文が入り、少しずつですが認知され始めていると感じております。

AIU:参加した学生も授業では触れられないビジネスの現場でのマーケティングの経験をすることができるなど、多くの学びを得ることができました。ありがとうございました。

鈴木酒造:こちらこそ大変ありがとうございました。相手が何を求めているか深く理解し行動する力、フットワークの良さを多くの場面で感じました。打てば響くみなさんは本当に素晴らしい可能性の塊です!
将来、AIU生のご活躍を日本酒を酌み交わしながらお聞きすることを楽しみにしています。

担当教員からのメッセージ

本プロジェクトは2021年度に開始した秋田県産品のフランス輸出促進プロジェクトの継続となります。初年度は鶏めし弁当を販売する株式会社花善の「EKIBEN ToriMéshi Bento」プロジェクトに始まり、2022年度は稲庭うどんを製造販売する株式会社 稲庭うどん小川と、いぶりがっこを製造販売する有限会社 まこと農産が食品見本市「SIAL Paris 2022」にブース出展する際に事前のマーケティング調査等を実施しました(過去のプロジェクトについては文末のリンクからご覧ください)。本学のフランス人留学生を対象としてマーケティング調査を実施したり、フランスに留学している正規学生が現地調査を行うなど、本学の強みである国際的な教育環境を活用したプロジェクトとなりました。私にとっても授業を通じてのみ知る真面目な学生達が、現地で見知らぬフランス人に元気よく挨拶して調査協力を呼びかける姿を目にして、大変頼もしく思いました。
このような機会をいただいた合名会社鈴木酒造様ならびに活動をサポートしてくださった秋田県観光文化スポーツ部 食のあきた推進課の皆様に感謝申し上げます。

この記事は2021年から行われているAIU✕秋田県内企業連携プロジェクトの後継事業です。2021年度、2022年度のプロジェクトと併せてお読みください。

中川 秀幸
国際教養学部 グローバル・ビジネス領域 准教授
地域連携協働研究センター コーディネーター