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日本大学生訪韓団に本学学生が参加
外務省による対日理解促進交流プログラム「JENESYS2016」の一環で公益財団法人日韓文化交流基金が主催・派遣した、日本大学生訪韓団(第1団/2017年3月2日~11日)に本学学生の長尾 緑さんが参加し、韓国の家庭へのホームステイを通じて感じたことなどを話してくれました。
日本大学生訪韓団(第1団)の活動内容の詳細は、こちら(外部サイト)で紹介されています。
訪韓団に参加したきっかけをお聞かせください。
大学の英語集中プログラム(EAP)で一緒に学んだクラスメイトたち、そしてさくらヴィレッジ(大学の学生宿舎)で共に暮らしたルームメイトとの出会いです。EAPで切磋琢磨した二人は、兵役のために現在は休学しています。それもあってか、二人の学ぶ意欲は高く、兵役のため思い通りに勉学に専念できないことを二人がもどかしく思っていたのを覚えています。
ルームメイトとは、時々チヂミやプルコギを食べながら、韓国の政治経済の話をしました。朴槿恵元大統領に対して怒りを表した多くの大学生がデモに参加していたことや、韓国の経済状態が芳しくないことから、彼女自身が日本への就職も検討していることを知りました。日本でニュースを見ているだけでは分からない生の声を聴くことで、韓国という国やそこに住む人々に興味が湧いたのです。
訪韓団への応募課題だった「韓国で日本ブームを起こすアイディア」として考えた「韓国人大学生対象日本での就活観光ツアー」はルームメイトとの話がきっかけとなっています。
参加にあたって、特に意識したことなどはありますか?
日本大学生訪韓団(第1団)の他の参加学生は、韓国語が流暢に話せる学生や、日韓関係についての知識と意見を持つ学生、韓国のポップカルチャーに詳しい学生など、みんな韓国の何かを知っていました。そんな中で、韓国について深いことは何も知らない私に何ができるのだろうと考えた時、韓国を知らない私だからこそ、学生代表をしたいという気持ちが湧き上がってきました。
代表挨拶では、「十人十色の人間交流」を掲げました。日本の大学生だけでも一人一人違う人間で、変わった「色」をしています。だからこそ、韓国人だから、日本人だからという障壁を壊して、国際交流を超えた「人間交流」をしようと誓ったのです。
特に印象に残ったことはありますか?
人間交流ができたと、特に記憶に残っている場面はホームステイです。私の受け入れ家族は、大学に入学したばかりにも関わらず、東野圭吾の本を数冊読み終えていたほどに日本語が堪能なイェウンと、彼女の祖父母の3名でした。私は日本語も英語も通じないハルモニ(「おばあさん」の意)とハラボジ(「おじいさん」の意)との関わり方に不安になっていましたが、お家へ着くと二人は太陽のような眩しい笑顔で私を迎え入れ、日本語の名前で自己紹介をしてくれました。
ハルモニとハラボジの二人は日本による統治時代を生きていたかもしれないとの想像はしていましたが、いざ歴史の足跡を目の前の人から感じる衝撃は大きいものでした。ハラボジ手作りのキムチとハルモニ特製のご馳走で彩られた夕食を囲みながら、イェウンの通訳を通して、私は日本統治時代に関する質問を二人に投げかけました。私を驚かせたのは、ハラボジが、学校では朝鮮語は禁じられていて、うっかり話してしまうと先生から竹刀で叩かれたことや、信仰に関わらず神社へ参拝し、頭を下げなければなかったことなど、占領下当時13歳のことを鮮明に覚えていたことです。「撤収」「気をつけ」「天照大神」「君が代」といった、いかにも日本による統治時代と関係する単語が次々と口から飛び出てきました。戦後初めて関わる日本人である私を受け入れ、温かい手で私の手を包みながら、満面の笑みで話しかけてくれる彼らの心と向き合った時、簡単には言い表せない、贖罪と感謝が混ざり合ったような想いが溢れ、目いっぱいにたまった涙が流れました。
この気持ちを、二人を楽しませるエネルギーに変えようと心に決めた私は、翌朝共通の話題を模索しました。料理が好きな私はハルモニにレシピを聞き、似ている日本料理をスマートフォンから紹介しました。ハラボジと音楽の話をしてみると、彼は「アリラン」を歌ってくれたので、私も好きな「空と君のあいだに」を歌いました。最後の最後に歌詞が飛んでしまったことが可笑しくて笑いだすと、家族のみんなも手を叩きながら笑いました。国籍、言語、世代、文化と、何もかもが違っているように見えても同じ人間です。ほんの些細なことに、あんなにも大きな笑い声をあげてみんなが笑顔になっているということが、なんて幸せなのだろうと、心が温かくなった瞬間でした。
訪韓団の交流活動を通じて感じたこと、伝えたいことがあれば教えてください。
日韓における慰安婦問題をはじめとして、世界中に国や地域の隔たりができています。残念ながら、今の私にはそれらの国交問題の直接的な解決方法は思い浮かびません。しかし、今回の訪韓団への参加を通して改めて、他国・他人と自分とは同じ仲間であるという前提をもとに関わり合うことが、二国間、二者間の関係性を構築する始めの第一歩になるということを確認することができました。
まずは普段の生活で関わる一人ひとりを尊重することを大事にしたいと思います。そしていつか私の姿勢が、周りの人々の姿勢や、属する団体の姿勢に影響し、人と人、国と国とがお互いを認め合うことが出来るような社会へ近づけばと心から願っています。
ありがとうございました。
AIU TOPICSでは、今後も、学生たちのグローバルな活動を紹介していきます。