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AIU Chat Night~教職員と語ろう~ 第4夜(中川 秀幸准教授、デュ・ウェンティ助教)

互いの顔が見える関係 - 1学年の入学定員が175名と小規模であることは、国際教養大学の良さのひとつです。コロナ前は学生の89%がキャンパス内の学生寮・宿舎で生活し、留学生も交えて多文化共生の空間を形成していました。現在は1年次(2021年度入学)の学生全員と希望する上級生全員が学内で生活しており、キャンパス内での活動も段々と拡がっています。今回はキャンパスに住む学生である赤羽 柚美さん(3年次・取材)と星野 慧さん(2年次・写真撮影)に学内で開催されたイベントをレポートしてもらいました。

コミュニティとしてのAIUを体感する「場」として企画されたシリーズ「AIU Chat Night~教職員と語ろう~」(全7回)。第4夜は発起人の磯貝副学長をホストに、中川 秀幸准教授(開発経済学、応用ミクロ経済学)とデュ・ウェンティ(杜 文媞、Wenti Du)助教(マクロ経済学、国際経済学)が、学生と語らいました。

学生と教員が向き合い座って語らう会場の写真

(中)みなさんこんばんは、中川です。レクチャーではないのでリラックスしてくださいね。私は、AIUにきて7年目になります。応用ミクロ経済学が専門で博士号を取得してから開発関連の機関で働いていました。現在は日本の文化政策の評価やローカルコミュニティに関わる研究をしています。
高校までは日本で過ごしていましたが、大学はアメリカだったので日本の大学については分かりません(AIUも「普通」の大学ではないので…)アメリカに行くのは大変でしたが、高校で英語が好きだったので頑張りました。

(ウ)こんばんは、デュ・ウェンティです。高校生まで中国にいました。高1の時に(留学の条件となる)TOEFLの点数をクリアしたので、高3を飛び級してアメリカの大学に行きました。
大学ではダブルメジャーで経済学と数学を学びました。今はマクロ経済学や国際経済学が専門です。AIUに来たのは2016年の秋で、私の初めての仕事です。

様々な視点を持つことの大切さ。 ― マクロ経済学はその視点のひとつ

(磯)マクロ経済学…難しそうですね?

(ウ)私自身はこの分野が好きなので、難しく感じたことはありません。もともと、いろいろな政策が国にどのような影響を及ぼすか知りたくて、マクロ経済学を勉強し始めました。マクロ経済学は様々な事柄に関わっていますが、ニュースを理解するのにとても役に立つのですよ。例えば、首相交代時に話題となる経済政策。こういった政策が私たちの周りにどのような影響を及ぼすのかを知ることはとても大切なことです。みなさんも興味や情熱をもってできることを探してください!それは、本当に大切なことですから。

(磯)ウェンティ先生はなぜ渡米したのですか?

(ウ)小学生の頃からイギリスやアメリカに留学することに興味がありました。中学生の時にアメリカのサマーキャンプに行って楽しかったので、アメリカに留学することにしました。いろいろな国や地域で、それぞれの違いを探すことが大切だと感じ、思い切って外に出ました。

学生に向かって、マイクを持って語りかけるデュ助教(ウェンティ先生)の写真

デュ・ウェンティ助教

(磯)ウェンティ先生は大学時代、経済学と数学のダブルメジャーだったんですね?

(ウ)そうです。アメリカでは多くの学生がダブルメジャーです。芸術とコンピューターサイエンスなど全然違うメジャーをしている人もいます。そして自分の力を異なる分野に注ぎ、議論をすることで、視野を広げます。異なる分野の視点から問題を分析することができると、より厳密で深く考えることができます。これはAIUのリベラルアーツにも似ていますね。

数学は未来を切り開いてくれるツール

(磯)中川先生はアメリカの大学に進学するのを決めたとき、家族から反対されましたか?

(中)私の兄弟が交換留学で1年間中国に行っていたこともあって反対はされませんでした。高校生の時、日本の大学は今の大学の環境とは違い、あまり勉強しないと聞きました。私は勉強をちゃんとしたかったのです。lazyな私は日本にいたら頑張れないと思い、自分を律するためにアメリカに身を置いたのです(笑)

(磯)そうだったのですね(笑)lazyだったら、アメリカの大学に進もうなんて思わない気がしますよ!中川先生は国際機関で働くことは考えませんでしたか?

学生にも呼びかける磯貝副学長の写真

磯貝 健副学長

(中)そうですね、あまり考えませんでした。私のクラスメイトには国連で働くことを選んだ人もたくさんいます。国際機関は給与も良いし安定した生活ができますが、研究はしにくいのです。私は実務家として働くよりも、研究をして開発途上国の人々の近くにいたかったのです。本学には開発を学びたいという学生も多くいますが、国際機関に所属して開発途上国でその国の発展に貢献したいと考えるならば、データに基づいた論理的な思考、つまりは数学や統計に関するある程度の理解は必須です。もし、ジェンダーや国際関係論の専門家なら、特殊な仕事もあるかもしれませんが、基本的には数字を扱うことが必要です。数学はツールです。言語と同じように、数学は未来を切り開いてくれるものでもあるんですよ。

(磯)そういえば、中川先生はよく、学生と共同研究をしていますよね?

(中)はい!アシスタントが必要なので、以前コースを履修した学生に声をかけて研究のお手伝いをしてもらっています。とても優秀な学生が多く、国際会議や学会で研究発表したりするんですよ。それは大学院や職場でも役に立つ経験だと感じています。私自身もとても楽しんで共同研究をしています。皆さんもぜひ一緒に研究しましょう!

秋田に住むということ

(磯)ウェンティ先生は、秋田で研究することでデメリットを感じることはありますか?

(ウ)全くありません!図書館やインターネットで必要な情報や文献をだいたい得ますので、大丈夫です。実は、秋田がとても好きなんです。今、日本語を勉強していて、秋田のコミュニティに近付こうとしています。例えば(大学の最寄りの)JR和田駅の近くのお店によく行ってオーナーと日本語でしゃべっています(笑)地元の人々と関わるのはとても楽しいです。秋田の人はとても親切で好きです。
初めて秋田に来たのは3月で、まだ雪がありました… 私のいたカリフォルニアのロサンゼルスとはかなり違いました。秋田に来て、とても平穏な気持ちになったんです。

(磯)1年生はこれから秋田に馴染んでいくことになると思います。なにかアドバイスはありますか?

(ウ)秋田の方言はとても難しいですよね(笑)私もまだ分かりませんが、秋田の人はとても優しいので、皆さんが困っていたら地元の人々が必ず助けてくれます。ぜひ、秋田をたくさん楽しんでくださいね。

数学が嫌いなあなたへ

(磯)ウェンティ先生、数学嫌いでグローバル・ビジネス領域(GB)の科目をとらない人にメッセージをお願いします。

(ウ)もしあなたがGBを選択しても、誰もが最初は同じスタートラインに立ちます。ディスアドバンテージはないので安心してください。数学は面白くて、生活と深く関わり、とても役に立つ学問です。そして、論理的に考えるためにとても大切です。
数学は経済のエッセンスでもあります。GBでは様々なクラスを履修することができます。全然違うフィールド学問の学問に足を踏み入れることもできますよ。興味のあることをたくさん学んで、将来のキャリアの選択肢をできるだけたくさん持っていてください!

Q&Aタイム

(学生)ジェンダー問題に関心があります。私はよく日本がジェンダー平等を達成するにはどうしたら良いか考えているのですが、経済学の視点ではどうやって変えていけばよいと考えますか?

透明なパーテション越しに対話する学生と中川准教授の写真

学生の質問に耳を傾ける中川准教授

(中)とてもホットなトピックですね。数年前、UCバークレー(※)の大学生が卒論で経済学者の間で交わされているオンラインの会話を調査・研究して、NYタイムズでも紹介されました。その研究によると、男性の経済学者についての議論は、経済学そのものや専門的なアドバイス(キャリア、面接、就職などの用語を含む)といった話題に限定され、女性については、家族や結婚のような個人的な情報や容姿などのジェンダー関連の用語に関する話題が多くなっています。
相手の性別によって、全然違うことを考えるんですね。経済学はこういった事実を提供して問題提起することができます。ジェンダー格差だけでなく、ほかの問題にも貢献することができます。人々が「差別しよう」と思っていなくても差別的になってしまう理由や、その構造を統計を取ることで知ることができます。
※UCバークレー:米カリフォルニア大学バークレー校

(ウ)そうですね、数字は本当に重要です。議論の根拠を提供するのが数字です。例えば格差はサンプルだけでなく現実にも存在することを証明する必要がありますからね。

(磯)本日はありがとうございました。数字が苦手というみなさんもぜひGBに興味を持ってくれたらうれしいです。

(中)ありがとうございました。レクチャーとは違ったので、とてもリラックスして話すことができました!

(ウ)ありがとうございました!

取材後記

グローバル・スタディズ(GS)に所属する私は、お二人にお会いするのは初めてでした。政治が学びたくてGSを選びましたが、経済政策がマクロ経済学で説明できることや、差別の問題を経済学を使って証明することができるというのを知り、もったいないことをしたなと思いました。せっかくAIUに来て専門の先生方の授業に参加することができるので、「政治らしい」アプローチだけでなく別の視点からも問題にアクセスしてみればよかったと思いました。(これから勉強します)
ありがとうございました!

(取材:赤羽 柚美)

写真はすべて星野 慧さん撮影