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AIU Chat Night~教職員と語ろう~ 第6夜(大森 久子准教授、三栗谷キャリア開発センター長)

互いの顔が見える関係 - 1学年の入学定員が175名と小規模であることは、国際教養大学の良さのひとつです。コロナ前は学生の89%がキャンパス内の学生寮・宿舎で生活し、留学生も交えて多文化共生の空間を形成していました。現在は1年次(2021年度入学)の学生全員と希望する上級生全員が学内で生活しており、キャンパス内での活動も段々と拡がっています。今回はキャンパスに住む学生である赤羽 柚美さん(3年次・取材)と星野 慧さん(2年次・写真撮影)に学内で開催されたイベントをレポートしてもらいました。

コミュニティとしてのAIUを体感する「場」として企画されたシリーズ「AIU Chat Night~教職員と語ろう~」(全7回)。第6夜は発起人の磯貝副学長をホストに、大森 久子准教授(宗教学、文化人類学)とキャリア開発センターの三栗谷センター長が、学生と語らいました。長くAIU生の就職や進学をサポートしてきたふたりの熱いメッセージをご紹介します。

円形に椅子を並べて語り合う参加者たちの会場写真

(大)こんばんは、大森です。文化人類学の授業を受け持ちながら、アカデミック・キャリア支援センターで、学部生向けの進学相談窓口を担当しています。

(三)こんばんは、キャリア開発センターの三栗谷です。2006年から職員として、たくさんの先輩たちを送り出してきました。よろしくお願いします。

アカデミック・キャリア支援センター(ACSC)

大学院進学を検討、予定している学部生に対して、進学相談、ワークショップ、特別講演などを通じて、分野・地域横断的な支援を行い、国内外の大学院および専門職大学院への進学をサポートしています。

アカデミック・キャリア支援センター(ACSC)

キャリア開発センター

ACSCと連携して、学生の進路選択を支援しています。小規模大学ならではの、個別相談に力を入れたサポートが特長で、学内企業説明会の開催やインターンシップの情報提供だけでなく、在学生と卒業生をつないだり、留学先からオンライン相談会につないだりといった、きめ細かな支援を行っています。

AIUの進路選択支援

自己理解は大事。あなたは、何をしたい?

(磯)ここにいる学生たちは1年生なので、まだ目の前のことに一所懸命だと思います。将来のことを考える余裕はないかもしれません。これまで、社会に出ていく学生をたくさん見てきたおふたりに、就職や大学院進学などの「社会の実態」を教えていただきたいです。

(大)難しい質問ですね(笑)AIU生がACSCに来ると、決まって質問することがあります。「自分なんかで本当に大学院に行けますか?」と。答えは「大丈夫です。先輩たちもそうでしたが、AIU生なら誰にでも可能性はあります。」でも、本当に大学院に行った方が良いのか、という点はよく考えないといけません。
大学院を卒業した後、世界に飛び出したいのか。もしくは日本に残りたいのか。進学したからこそできることと、進学しないからこそできることがあります。自分がどんな人間で何をしたいのか見極めながら決める必要があるのです。これまでの先輩たちがどんな道を歩んでいるのかを見ることはとても参考になると思います。

(三)実は今日、このイベントの前に大森先生と話していたのですが、人生は「出会いと運」だという結論に至ってしまいました。それだと、ここで話すことではなくなってしまいますよね(笑)ただ確かなのは、とにかく活動量が多い人のほうが「出会う」確率は上がるということです。また、能力っていつ伸びるかわからないとも思うのです。大学生は、自分の身の丈を決めるには実はまだ早いんです!
「今の就活市場はこうだ」というのはあります。もちろん、就活を本格的に始めるときには自分の立ち位置を理解しなければいけません。でも、1年生はまだがむしゃらに前を向いて過ごして良いのかなと思いますね。就活が楽か大変かで言えば大変なのは当たり前ですが…

(磯)活動量をあげて可能性を広げることは大切ですよね。では、世の中で通用する人になるために身につけるべきことはありますか?

(三)自己理解ができていることは大切だと思います。4年生の時に「私はこんなことが得意です!」と言えることは大事なことです。そのためには、好き嫌いをあまり持たないことです。「この人嫌い!」というと、その相手もあなたを嫌いになってしまうように、何事にも挑戦してみる姿勢を大事にしてほしいです。

マイクを片手に学生に笑顔で語りかける三栗谷センター長の写真

三栗谷センター長(中央)

(大)ACSCでは、すべての学生からの相談を受け付けています。1年生には1年生だからこそ伝えたいこともありますので「まだ早いから」と考えず、ぜひ進学に少しでも興味を持ったときに来てください。例えば「大学院に行きたいけれど何がやりたいかわからない」という人に、おすすめできる科目もあります。もともとある程度知っている分野の科目だけでなく、視野を広げて、知らない分野の授業を通じて、何が自分に合っているかを知っていってほしいです。

(三)そのとおりだと思います。脈絡なく勉強しないでほしいですね。脈絡のある勉強をして、発展的な内容に踏み込むと力がつきます。でも現実的な話として、GPA(※)を維持するために難しい授業を避ける人もいますよね。
AIUにいるとGPAとか留学先とか、他の学生と比べてしまうことが多い。「この先生は(高成績である)Aをとりやすい。」といった色々な噂もあります。キャリア開発センターでも「グローバル・ビジネス領域グローバル・スタディズ領域どっちのほうが就職に有利ですか?」とか「どこに留学行くのが良いですか?」とかいろいろ聞きに来る人もいます。でも、そういう問題ではないのです。「あなたが何をしたいか」それが大事です

※ GPA:Grade Point Average(成績評価平均点)。学業成績をはかる国際的基準として使用されるもので、本学では留学や卒業の要件として、一定以上のGPAを維持することが求められる。

夢見る力を育てる

(磯)長くAIU生を送り出してきたおふたりからみて、AIU生の「特徴」ってありますか?

(大)AIUの学生は本当に優秀だと思います。皆さんの先輩にはオックスフォード大学で勉強していたり、国際労働機関(ILO)で働いていたりする人がいる。AIU生はやろうと思っていることは何でもできるんです。あとは「夢見る力」があれば

マイクを片手に学生に語りかける大森准教授の写真

大森准教授(中央)

(磯)「夢見る力」、良いですね〜。今の学生の多くは「優等生」と言われて育ってきたように感じます。多少遠回りしてでも、やりたいことを突き詰める経験も必要だと思います。「4年で卒業しなきゃいけない」と考えている人も多い気がします。

(三)確かにそうですね。私は、ここに来る前は中学・高校の教員をしていました。当時は大学院卒の教師は、お給料が高く周りからは疎ましく思われていましたが、今は大学院卒の人がかなり増えています。今、理系学部では進学が当たり前ですよね。それと同じように文系とされている分野でも、進学が当たり前になる時代が間もなく来るのではないでしょうか。せっかくリベラルアーツ教育を求めてAIUに来てくれたのなら、大学院進学という選択肢もありなのではないかと思いますね。
でも、AIU卒業後、すぐに大学院に行かないといけないわけでもないです。働き始めた後に、大学院で学んで転職したAIUの先輩もいます。いつ挑戦しても良いんです。そういう選択肢があるというのを知っておくことも大切です。

Q&Aタイム

留学した後の大学院受験や就職活動は厳しい?

(学生)私は4年で卒業して大学院に行きたいと考えています。20代は短いから、早く社会に出たいし大学院にも行きたい。でも、3年生の冬から留学に行くので、留学から戻ってから大学院受験とか就活するのは厳しいのでしょうか?

(大)大学院なら、留学先から応募している学生もいましたよ。推薦状なども、留学先の先生に書いてもらっていました(!)
ロンドン大学の大学院とAIUは提携関係にあるので、法学部以外だったら進学のハードルが低くなっています。そして、留学中もオンラインでACSCの個別相談を使えますので、ぜひ留学中も大学院受験の準備期間として使ってください。

(三)就活は今、とても複雑になっています。例えば、1年生の時のインターンで内々定が出たり、2年生の時に内定をもらえて2年間それを保留できる企業もあります。「3年生になったらガチガチにインターンをして内定をもらう」というスタイルだけではなくなっているのです。実際に1年生のころから内々定を持っているAIUの学生もいました。選択肢はたくさんあります。

質問する学生の写真

自己理解は、どうやればいい?

(学生)自分のやりたいことが定まっていません。「自己理解」は具体的にどうやってやればよいのでしょうか?先輩たちはどんなことをしてきたのですか?

(三)得意・不得意を紙に書き出してみる、自分で考えるだけじゃなくて他の人に聞いてみる、自分の歴史を振り返ってみる、などよく言われていることをとりあえずやってみるのはひとつの方法です。「なりたい自分」と「本当の自分」って案外違っていたりします。それを、ある程度冷静に考える機会を作ってみてください。
進路支援の一環で学生の自己分析をお手伝いすることもあるのですが、会話をしているうちに、本人が「小さい頃、あんなことがあった」とか「高校の時こんなことがあった」といった調子で、自分が興味のあることを改めて発見できることって、よくあるんです。リベラルアーツ大学ということもあって、なにかやりたいことが最初から明確にあってAIUに来ている学生は少ないと思います。やりたいことが決まっていないのはあなただけではないので、焦らないでください。

(大)本当にそうです!私も今日はこんな風に偉そうに座っているけれど、たくさんたくさん迷ってきました。

(磯)キャリアデザインは、一生かけてやることなのだと思います。ぼんやりとした興味分野に自分の体を実際に近づけてていくことで、それがはっきりすることもあります。

(三)皆さんのご両親の時は、会社を辞めることが人生のレールから外れるようなものという時代だったと思いますが、今は転職することがネガティブではなくなりました。「辞める」という決断はしんどいけれど、前向きにとらえたいですね。

(磯)最後におふたりから一言お願いします。

(三)ニュースで、JAXAの宇宙飛行士の要件が、文系でもよくなったというのを見ました。しかも、1次試験はTOEIC。宇宙ビジネスに関わるAIU生が出てきたら面白い!SDGsなどはまだ地球の中だけの話です。でも、可能性は宇宙にまで広がっています。AIU生には今あるメニューから選ばないでほしいと思います。

(大)私は皆さんに「大丈夫だから!心配しないで!」ということを改めて伝えたいです。皆さんは本当に優秀です。そして、AIUには素晴らしい先生方や、助けてくれる人がたくさんいるから大丈夫です!本日はありがとうございました。

取材後記

心に残る言葉がたくさんありました。「可能性は無限大だから、あとは『夢見る力』」「キャリアデザインは一生かけて行うもの」などなど、挙げたらきりがありません。そしておふたりは、学生に「夢を見させるプロ」だと感じました。おふたりの話を聞いたり、直接お話ししていると自分も頑張れば何でもできる気がしてくるのです。前向きになれます。三栗谷さんには就活の前にも相談し、大森先生には講演会の後にお話しさせていただいたのですが、自分の将来が楽しみになりました!

お話の中にもありましたが、AIUには学生の人生を一緒に本気で考えてくれる方々がたくさんいます。自分はどんなことが好きで、社会にどう関わっていきたいのか考えるときには、ぜひお話ししに行ってほしいと思いました。(私も卒業生としてサポートしたいと思います!!)

(取材:赤羽 柚美)

写真はすべて星野 慧さん撮影