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インタビュー:本学学生の梶原 哲司さんが全豪ディベート大会で優勝

また、これは自分の肌感覚でしかありませんが、海外の方は自分の意見を積極的に言うことが多いと感じます。大教室でのレクチャーでも、学生の手がずっと挙がりっぱなしでした。オーストラリアだともはや教室の大きさは関係なく、どんな場でもアクティブに発言する人がすごく多いなと感じました。自分の意見を言った後に誰かから反対意見を言われたり、お互いに自分の意見を言い合うことに慣れている人が多い気がします。

一方、日本では広い意味のディベートが敬遠される傾向にあると思います。本当はディベートは言い負かす場ではないのに、そうしたイメージがついてしまっているのが嫌だというディベーターが実は多いです。「ディベートに関するディベート」も起きていて、「言い負かしたり論破したりするばかりのディベートは攻撃的すぎる」と批判していくべきなのか、それもディベートの多様性として考えるのか、といった大学即興型英語ディベートのスタンスには、意見が分かれているようです。

学生の集合写真
ANUディベート部のメンバーと(写真の下段右から2人目が梶原さん)

AIU:ヨーロッパ圏では、ディベート部が300~400年といった大学の歴史とほぼ同じぐらいの背景を持っている大学もあるそうですね。海外のディベート部で活動しながら梶原さんが感じた「ディベートが浸透している感覚」について、感じたことを教えていただけますか?

梶原さん:ディベート経験者の数が多いという点においては、日本と海外でディベートの浸透度の違いを感じますね。ただ、特に最近は日本と海外でそこまで差は大きくないと感じています。というのも、日本のディベーターが世界で活躍することが多くなっています。先日、中国で行われたディベートの北東アジア大会でジャッジを務めたのですが、日本チームが決勝に勝ち進んでいました。また、ベストディベーター賞も日本のディベーターが獲得していました。そうした功績を見ると、日本でもディベートが盛んになってきていると感じます。

「AIUって特別な大学だね」と言われやすいですが、ディベートの批判的思考とか英語のプレゼン能力に関しては、どの大学もすごくレベルが高いです。なのでAIU以外の大学にも才能のあるディベーターがたくさんいます。

ディベートはコミュニティ作りのツール

AIU:梶原さんにとってディベートとは?

梶原さん:私にとってはディベートは大切なコミュニティの一つです。ディベートを通して日本だけでなく世界中に友だちができますし、ディベートをやっている人は少ないですが、世界中どこに行ってもディベーターはいるので、コミュニティができるツールだと思っています。ディベートでできた友だちが好きだからという理由で、ディベートを続けている部分もあります。また、ディベートを「自分の力を試せるゲーム」の一種のように考えています。

以前、ディベートの世界チャンピオンがインタビューで「英語を満足に喋れなかった自分にとって、誰にも邪魔されず、誰にも英語が違うと指摘されたりせず、自分の意見を言う時間が確保されている。ディベートはそういう場所だ。」という話をしていて、私もそれにはすごく共感しました。自分の意見を一生懸命聞いてくれる人たちがいて、その中で決まった時間話せる。そこがディベートで一番好きな点ですね。

梶原さんの写真
梶原さん

AIUを目指す高校生やこれからの留学に出発する後輩たちへ

AIU:最後に、AIUを目指す高校生やこれからの留学に出発する後輩たちへ、メッセージをお願いします。

梶原さん:色々なことを勉強できるという点に魅力を感じて、AIUを目指している受験生の方が多いと思います。そんな受験生の皆さんにはぜひ、興味のない分野や自分がこれまで触れてこなかった分野の科目も勉強してほしいなと思っています。私は当初、「高校で数ⅡB取ってないし、数学の科目は1個ぐらい取っとけばいいか」「理系の分野もやってないから、理系の科目はそんなに履修しなくていいか」といった感じで理系の科目を履修していませんでした。

しかし、オーストラリアに留学し始めてから、「時間の哲学」という分野に一番興味を持ち、考え方が変わりました。「時間とは何か」といったことを考える分野なので、物理の知識が必要になるんです。まさか哲学に物理の知識が必要だとは思ってもみなかったので、こちらに来てから知識をつけることになりました。

なので、難しそうな科目や自分にとって興味がなさそうな科目にもぜひチャレンジして欲しいです。自分が違う分野の知識を持っていればいるほど、周りと違う意見を出せます。留学では、アクティブな学生が周りにいっぱいいて、自分が考えていたような意見は他の学生に全部言われてしまうみたいなことが往々にしてあります。そうすると、どんどん発言できなくなってしまいます。苦手な分野に取り組むことは精神的にきついこともあるかと思いますが、ぜひ色々な分野の科目を履修して、将来のディスカッションのために準備しておくのがいいと思います。

これは留学に行く前の人へのメッセージになりますが、「留学を意味のあるものにしなきゃ」と思いすぎないでほしいです。私は留学に行く前まで、「日本人とつるんでいたら留学に行っている意味がない」と自分を追い込むような強い思い込みがありました。でも実際に留学に来たいま、あえて日本人コミュニティに参加しないことで、精神的に苦しくなってしまうときがあるということに気がつきました。

例えば日本人とは関わりを持たずに他の国から来た人だけと友だちになろう、とか、いろんなことを経験して勉強も頑張ろう、といった理想だけ持ってしまうと、自分の容量をオーバーしてギャップに苦しんでしまうこともあります。なので、過度に自分にプレッシャーをかけず、留学中の目標を達成できなくても自分を責めすぎないということが大事なのかなと思います。留学していること自体が素晴らしい挑戦だからです。日本人のコミュニティでもいいから、とりあえず一番自分が心地いいと思える場所を見つければ、新たな挑戦の土台になります。そこから思い切り留学を楽しんでほしいです。

学生の集合写真
ANUディベート部のメンバーと(写真の上段左から3人目が梶原さん)