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エネルギー分野での産学金連携が始動

2021年5月18日(火)、国際教養大学はエネルギー分野において秋田県内外で先進的な取り組みを行っている三菱商事エナジーソリューションズ株式会社、株式会社ウェンティ・ジャパン、そして株式会社北都銀行と「秋田県における人材育成の活性化を目的とした産学金連携に関する協定」を締結しました。9月6日(月)には、協定に基づく取り組みの最初の一歩として、2022年度春学期に電力・エネルギー全般をテーマとした寄附講座を本学にて開設することで4者が正式に合意。その記念式典での各社代表の言葉とともに、今回の協定に込められた思いをご紹介します。

沿岸の発電用風車の空撮写真

秋田県沿岸に並ぶ「秋田潟上ウインドファーム」の発電用風車(写真提供:ウェンティ・ジャパン)

人材育成と地方創生の鍵となる

今回4者が締結した協定は秋田県における人材育成の活性化を目指すもので、2022年度春学期に開講される寄附講座は、その第一歩となる取り組みです。

記念式典で証明した合意文書を手に取る4者の代表の集合写真

左から三菱商事エナジーソリューションズ株式会社代表取締役社長の岩﨑氏(オンライン参加)、株式会社ウェンティ・ジャパン代表取締役社長の佐藤氏、カセム学長、株式会社北都銀行代表取締役頭取の伊藤氏

国際教養大学では、知力と人格に優れ、責任感と情熱を持って世界の舞台で活躍できるグローバルリーダーの輩出をミッションとしており、多様な知識を習得し、それらを関連・応用させながら最適な解決策を探る能力を醸成するとともに、様々な困難を克服し、人間力強化を目指す「応用国際教養教育」に資する機会を学生に提供することに力を入れています。学生には知力向上と人間力強化のための実践の場を提供しつつ、人材育成や地方創生において秋田県へ貢献するという両方の視点で地域企業との連携を模索していたところ、風力発電が盛んで再生可能エネルギーの先進地・秋田県で事業を進める3社との連携に至りました。

地球規模での知恵の輪を発展させていきたい(カセム学長)

記者会見で話すカセム学長の写真

これからの世の中は、我々がこれまでに経験していなかった速度で科学技術の発展と共に変わっていきます。この10年ほどで、デジタル技術を活かしたAI、IoT機器が社会に普及し、私たち人間社会の生活を豊かにしてきました。これから数十年先がどのように変化しているか予測できないため、ある一つの分野で強くなったからといって、この先ずっと強いということはありません。

大学時代に汎用性の高いスキルを身に付けると、世界がどのように変容しても、対応できる人間になります。基盤がしっかりしていれば、何があっても、その潜在的な力を発揮できるということが、本学のリベラルアーツ教育の根底にあります。今回のエネルギー分野については、生活・産業の基盤にあるものとして正しく理解し、それを応用して未来を創造するためのアイデアを生み出していくことがとても大事になります。

未来は、過去と今日の上に創造するものです。世代間の交流も進めながら、発想豊かなアイデアを提案できる人材、ひいては豊富な知識と課題解決能力の両面を併せもった人材を育成したい。そんな人材であれば、どこに行っても、どの産業でも、活躍できるはずです。

日本は、10年前に(東日本大震災で)大打撃を受けました。私は日本に来てからの50年の中で、その事を思い出すと、初めて日本国民が自信を失った1週間だと感じました。その1週間の暗闇の中で日本国民が頑張って、例えば1カ月半で東北新幹線が再開通したことを見て、感動する反面、2度とこのようなことがあってはいけないと思っていたのですが、ちょうど10年後に、3社が共同して答えを出そうとしているのだと実感しています。未来を創造する中で、本学は200以上の提携大学が世界中にあり、その中にはエネルギー分野での名門大学もあります。そういった大学では地域社会や企業体とも密接な関係をもっていて、著名な研究者も在籍しています。この大きな地球規模での知恵の輪を、この連携協定や寄附講座を通じて、また発展させられるようなことができれば幸いと思っております。

(今回の協定を)ただただ挨拶、形式だけの協定で終わらせるものにしたくない。ちょうど2カ月前、(学長)就任の挨拶の時も申し上げたように、やっぱり日本の未来は、地方が自信を持って未来へ歩めるものだと思わない限り「国の未来」というのは綺麗な言葉に過ぎない。その大黒柱として、この新エネルギー事業が発展することを大いに期待しています。ぜひ、地域と地球をつなげることに我が大学を活用してください。我々も精一杯頑張って参ります。

再生可能エネルギーの先進県で、世界を牽引できる人材育成を(三菱商事エナジーソリューションズ 岩﨑社長)

オンライン参加につき、モニター上に映し出される岩﨑社長の写真

ウェンティ・ジャパン様と66,000kWの陸上風力「秋田潟上ウインドファーム」を共同事業として展開している弊社の秋田県とのご縁は足掛け8年になりました。”つぎ”を創るというコンセプトのもと、発電事業の展開を目指しています。再生可能エネルギー発電事業の”つぎ”のかたち、地域に根ざす企業市民として地域と共生する”つぎ”のかたち、地域を活性化するためになすべき”つぎ”のかたち。今回、ご縁のある秋田で、再生可能エネルギーを軸とした秋田の活性化、とりわけ全ての基礎である人材育成について、志を同じくする仲間と具体的なアクションを開始できることを非常に光栄に感じています。

日本一風力発電が盛んなエリアである再生可能エネルギーの先進県、秋田県を牽引する人材、そして秋田を越えて日本を、世界を牽引できる人材育成に少しでも貢献できればと考えています。

地域共生の課題を大学と一緒に考えていきたい(ウェンティ・ジャパン 佐藤社長)

記者会見で話す佐藤社長の写真

いま再生可能エネルギーを考えるということは、日本の電力・エネルギーの状況を考えること、秋田の産業育成を考えるということ以上に深い意味があると思っています。なぜなら、再生可能エネルギーを考えるということは、地球をどう考えるか、地球の中における人間の生き方をどう考えるかということに行きつくからです。日本に住む我々が、エネルギーを通じて、どういう生き方をするかという課題にもなります。エネルギーを考えることは、地球倫理、環境倫理、そして世代間倫理など人間社会の様々な側面を考えることでもあるのです。

国際教養大学とは、事業者の枠を越えて、ぜひそのような広いテーマにも取り組んでいきたい。弊社としても、このような観点で物事を考えるという新しい扉が開いた記念すべき日だと思っています。

秋田県ならではの連携を通じて、脱炭素社会の先進県へ(北都銀行 伊藤頭取)

記者会見で話す伊藤頭取の写真

現在秋田県では、全国で最多となる300基を超える陸上風力が稼働しています。さらに、直接の投資総額が1兆円とも2兆円とも言われる洋上風力発電の事業が進んでおり、脱炭素社会の先進県となる機運が高まっています。特に、少子高齢化・人口減少が叫ばれている秋田県にとっては、経済を復興することのできるまさに千載一遇のチャンスです。

風力発電事業を産業として育成していくためには、サプライチェーンを秋田に構築すること、すなわち風力の産業集積が必須です。そのためにはグローバルな視点と地域の視点両方が不可欠であり、欧米での先行事例を参考にするにあたっても、グローバル人材の集積点である国際教養大学と、風力発電事業に縁の深い我々3社が今回連携できることは誠に意義深く、秋田県ならではの成果と言えるでしょう。

寄附講座の概要

本講座で学生は、講義やフィールドワークを通じて世界の再生可能エネルギーの取り組みや挑戦を学び、秋田県における再生可能エネルギーの取り組みや課題へと応用しながら、様々な課題解決の思考訓練を行います。国内外で活躍するグローバルリーダーからリーダーシップを学ぶことによって、将来、秋田県や国内外の経済活性化を担う人材育成の場となることを目指します。

  • テーマ:電力・エネルギー全般
  • 実施時期:2022年度春学期(4月~7月)
  • 単位数:3単位(1週150分×15週)
  • 言語:英語
  • 講義テーマ例:
    ・脱炭素化やエネルギー源の多様化、エネルギー転換に代表される社会環境のグローバルな変化
    ・国内外の再生可能エネルギー市場の課題と取り組み
    ・電力事業を通じた地域共生策
    ・再生可能エネルギーを中核とした発電・ネットワーク技術の進展
    ・次世代エネルギー関連技術の進展 など

お問い合わせ

国際教養大学 研究・地域連携支援課
AILA推進・研究支援チーム 担当:山野井
Email: research@aiu.ac.jp
電話番号: 018-886-5835