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私の留学レポート:アメリカ/ジョージ・ワシントン大学〜佐藤 究さん(1)~

国際教養大学では1年間の留学が必須となっています。語学留学ではありません。専門科目を現地の学生と共に履修し、本学での卒業単位の一部として認められる必要がある、「本気」の留学。学生が、それぞれ深めたい学問分野に応じて200以上ある海外提携大学の中から選択します。良いことばかりじゃない、ときには苦しいことや辛いこともあるのがAIUの「本気」の留学です。ここでは、そんな学生一人ひとりのストーリーを自身の言葉でレポートしてもらいます。

今回は、アメリカに留学中の佐藤 究さん(さとう きわむ)さんのレポート第1弾をご紹介します。

佐藤 究さんの写真
佐藤 究さん(米国議会議事堂前にて)

国際関係論の分野において高い評価を受けている大学へ

ジョージ・ワシントン大学はアメリカの首都であるワシントンD.C.に位置し、ホワイトハウス、世界銀行、世界の著名なシンクタンク等が歩いて行くことのできる距離にあります。また、アメリカ政府の高官を多く排出してきた非常に歴史のある大学で、国際関係論の分野において高い評価を受けている大学です。また、大学院の学生の割合も高いため学部生とは違った考え方を持った方との交流を深められるのも魅力です。

選んだ決め手は濃い授業を受けるためと先輩からの強い推薦

国際関係論、特にロシアの外交政策に強い関心をもっていたため、その分野の先進的な教育を受けられる、という点が決め手でした。当初は留学の目標に英語以外の言語の習得を掲げていたためロシアやフランスへの留学を検討していましたが、第一に内容の濃い授業を受けるには英語圏への留学が最適だと考えたこと、第二にディベート部で長らくお世話になっている先輩からの強い推薦があったことで、最終的にジョージ・ワシントン大学に決めました。

友人とアメリカンバーベキューを楽しむ佐藤さんの写真
友人とアメリカンバーベキューで本場の味を堪能しました(左手前から2番目が佐藤さん)

世界のリアルを包み隠さず学ぶ

国際関係にまつわる授業で、特に日本にいては学ぶことのできない内容の科目を多くとっています。例えば日本ではタブー視されることも多い核の安全保障の授業は知識ベースのレクチャーだけではなく、ワシントンという土地柄か政策決定に必要な情報や考え方を扱います。この授業の教授は米海軍の潜水艦で実際に核兵器を運用していたという経歴を持ち、政策決定において現場の技術を理解しておくことの重要性を強調していました。加えて核軍縮から大まかな核兵器の技術まで密度の濃いお話をしてくださり、自分は唯一の被爆国であり原発事故も経験した日本出身の学生として複雑な心境を抱えながらも、同時に実際に世界中にある核兵器の実情に対して目を背けず学ぶことができることへの喜びも感じました。

自信が揺らいだ時は、その国の文化に理解を深めることが解決策

AIUの留学は語学留学ではなく学術的な目的であるため言語面について触れるのは恐縮ですが、一点印象に残った「気づき」を紹介させてください。英語での授業や学術的な議論を英語ですることはAIUで経験してきたこともあり、今日まで大きな障害を感じたことはなく、特にリスニングにおいてはまったく理解できないということはないと感じています。一方で、日常会話の特にアメリカ人グループの中での会話が時々まったく理解できないことがあり、自分の英語がまだ未熟であるためだと思っていました。しかし、アメリカ人グループの中で会話を続けるうちに、リスニング能力の課題に加えて、アメリカの文化に対する無知がもう一つの要因だと気がつきました。例えるならお年寄りが若者のグループの会話に参加しようとして、会話の内容が理解できないような状況でしょうか。今後の留学の中ではアメリカの文化に対する理解を深めることにも注力していきたいと思います。

ジョンズ・ホプキンス大学の図書館の写真
ジョンズ・ホプキンス大学の図書館に行ってきました。AIUの図書館もとても美しいですがこちらも負けていません。

留学中に成し遂げたいこと

2点あげたいと思います。AIUでは他大学の卒業論文に相当するセミナーペーパーという課題があるのですが、私はアメリカとロシアの国際政治に対する視点の違いを解き明かしたいと考えています。そのため1点目はこの問いに対する回答を模索することです。アメリカに関してはアメリカ政府の政策決定に携わられていた先生方のお話やシンクタンクなどでの発表を通じて日々のニュース分析を補う形で糸口を探したいと思います。ロシアに関しては日々の授業に加えて、ワシントンという土地柄、集まってくる情報や冷戦後に集められた資料を通じて理解を深める予定です。
2点目は前述のようにアメリカの文化にたくさん触れることです。友人との日常会話はもちろん、ワシントンをはじめとして各地にある博物館や歴史的建造物をめぐることがこの目標達成の近道だと思っています!

独立記念館の内部の写真
独立宣言が署名された独立記念館の内部です。木製の椅子や小さな部屋は当時のアメリカの国力を物語っているようで、現在の超大国の姿からは想像できない過去を想起させます。

AIUへの入学や留学を目指す皆さんへ

留学は決して楽しいことだけではありません。日本にいたときは普通に手に入れられたものが、手に入らないか数倍の値段で売られています(例えばラーメンは日本の3~5倍くらいの値段で売られています)。AIUの友人も世界中に散らばってしまい家族とも会えなくなるので寂しさも募ります。
一方で離れた時間を過ごす中で当たり前だった人とのつながりの大切さや秋田の食や文化の魅力を再認識できました。この経験から私が学んだことは今生きているその瞬間を精一杯楽しむことの重要性です。この記事を読んでいる皆さんの中には、AIUや留学への憧れを抱いている方が多いと思います。どちらも最高の環境であると私は思いますが、同時にあなたの今を全力で楽しむことで、その後の将来がさらに実りあるものになると思います。

ふるさとの後輩へ

最後にこの留学に至るまで秋田から出たことのなかった私から、同じように秋田で育った高校生の皆さんに伝えたいことがあります。中学生の時分は英語の勉強が大の苦手だった私は、一念発起して苦手を克服するよう今日まで努めてきました。結果として世界でも最高レベルの国際関係の授業をアメリカで受けられるようになりました。たとえ今、AIUへの入学や海外留学が高い壁のように感じていても、継続すれば努力は実ります。月並みなアドバイスですが、諦めることなくチャレンジしてください!応援しています!

スミソニアン博物館に展示されている『読書する娘』の絵画
ワシントンにあるスミソニアン博物館はほとんどの展示が無料です。こちらはフラゴナールの『読書する娘』です。

国際センターから一言

留学には多くの貴重な側面があります。新しい文化に触れ、自立を図り、心を開き、母国では学べないことを学び、新しい言語も学ぶ。文法と単語さえマスターすれば、コミュニケーションに困ることはないと思っている人も多いかもしれませんが、佐藤さんがおっしゃるとおり、その国や地域の文化を深く理解しないと、友人やクラスメイトとのくだけた会話を理解できないことがあります。文法や単語と同じように、文化的背景の理解も言語を真に習得するためには不可欠であり、文脈を完全に理解するようになるのはその文化にどっぷりと浸れる長期留学でしか成しえないことかもしれません。佐藤さんが一日も早く、友だちとより深い話ができるよう応援しています!

英語版ウェブサイトでは、留学生たちの本学での留学体験記を「Student Voice」として紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。