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私の留学レポート:アメリカ/ジョージ・ワシントン大学〜佐藤 究さん(2)~
国際教養大学では1年間の留学が必須となっています。語学留学ではありません。専門科目を現地の学生と共に履修し、本学での卒業単位の一部として認められる必要がある、「本気」の留学。学生が、それぞれ深めたい学問分野に応じて200以上ある海外提携大学の中から選択します。良いことばかりじゃない、ときには苦しいことや辛いこともあるのがAIUの「本気」の留学です。ここでは、そんな学生一人ひとりのストーリーを自身の言葉でレポートしてもらいます。
今回は、アメリカに留学中の佐藤 究さん(さとう きわむ)さんのレポート第2弾をご紹介します。
ワシントンD.C.に位置する大学ならではの深い学び
ジョージ・ワシントン大学で興味深かった授業は、次の2つです。
Negotiation and Conflict Resolution(参考邦題:『交渉と紛争解決』)
「交渉」というと少し仰々しいタイトルの授業ですが、実際には日常は交渉の連続だという話から授業が始まりました。旅行先を友だちと決めるやり取りから外交交渉まで、すべてが「交渉」であり、その中で相互の利益を最大化する手段を模索することが重要だと強調されました。以前までは交渉とは相手を打ち負かすものだという認識を持っていただけに、世界の見方が大きく変わるきっかけとなった授業です。また、実践の機会も多く、チーム同士で特定の問題について交渉のロールプレイを何度も行いました。AIUでも以前、授業内で紛争解決のための交渉のシミュレーションをしたことがありましたが、繰り返し交渉の練習をする様子はさながら「訓練」で、実務を重視するワシントンD.C.に位置する大学ならではだと感じました。
Oil; Industry, Economy, Society(参考邦題:『石油エネルギーがもたらす産業、経済、社会への影響』)
この授業は石油市場の現状と国際社会への影響を分析する授業です。比較的大人数の授業なのですが、時間内に二度は建設的なコメントをしないと出席点がもらえないというルールもあり、対話を重視した双方向型な授業スタイルです。加えて、扱っている内容も最新のニュースに専門的な分析を行う形式で、学部の授業ながら問題を深くまで掘り下げるものとなっていて、日々勉強になっています。一般的に学部の授業は大学院と比較して基礎的、基盤的な分野しか扱わないことが多いため、高度な専門性を用いた分析は稀です。リベラルアーツを学ぶAIUでは特定の分野の専門性はなかなか得られないものなので、それを留学先で補完できたことはジョージ・ワシントン大学を選んでよかったと思う理由の一つです。
「政治の街・ワシントンD.C.」で過ごすキャンパスライフ
学びの質については前項で挙げたように非常に満足いくものとなっています。また、現地で交流する方々は「政治の街・ワシントンD.C.」に集まっているだけあり、各々の確固とした意見を持っている方や自分の全く知らない分野で活躍されている方も多く、一人ひとりとのお話が濃密なものだという点もこの留学の良さだと思います。一方で、基本的に誰もが忙しい日々を過ごしている街でもあるためか、人と人とのつながりはAIUと比べて希薄に感じます。比較的小さなコミュニティ内の寮生活で24時間共に過ごすAIUでのキャンパスライフに慣れていたため、人とのつながりという面では少し残念に思います。
もう一点、デモや抗議集会も多く、交通インフラへの影響や夜間の騒音には幾度か苦しめられました。政治的対立の影響は身の回りにも潜んでおり、時にはルームメイト同士がイスラエルとパレスチナの対立をめぐって言い争っているのを目にしたこともあります。このような政治問題の身近さは良くも悪くもD.C.ならではのもので、貴重な経験となりました。
心機一転、フェンシングに挑戦!
ワシントンD.C.に来てからは、心機一転新しいことをやってみたいと思いフェンシング部に所属しています。日本にいたときは居合道の稽古をしていたのですが、同じ剣でも考え方が大きく異なり当初はルールを把握することも一苦労でした。しかし、初心者の自分に対してもチームメイトが親切に教えてくれたことで徐々にルールや技を理解できるようになり、課題の多い生活の中で数少ないリフレッシュの時間となりました。
メキシコで初めて過ごした「雪のないクリスマス」
ジョージ・ワシントン大学の休暇は、夏休みが長く冬休みは短いという特徴があります。8月に留学を開始した私の場合、日程の都合で夏休みを挟むことなく帰国することになるので少し口惜しいです(笑)。そんな短い冬休みを謳歌すべく、休み期間は隣国メキシコに旅行に行きました。秋田県出身の私にとって雪のないクリスマスは初めての光景で、不思議な魅力のあるメキシコ文化とともにクリスマスを堪能してきました。また、メキシコでは値切りが当たり前に行われていて、英語の通じない方々と身振り手振りで交渉するのは大変でしたが、旅をしているという実感を得られてこちらも良い思い出となりました。(交渉の授業のいい実践にもなりました。)
多様性に富んだアメリカの食文化
アメリカは食文化の多様性に非常に富んだ国だという点を紹介したいと思います。ご存じの通り、アメリカには移民によってつくられたという歴史があり、それぞれの文化圏の人が各々の文化に誇りを持って暮らしています。そのため日本では見かけることの少ない、遠く離れた地域の料理のレストランが立ち並んでいます。中東料理、アルメニア料理、キューバ料理と様々な国の食文化に触れられたので、次はそれぞれの国で本場の味にトライしてみたいです。
国際センターから一言
佐藤さんが『交渉と紛争解決』という科目の授業を通して学んだことは、すべての大学生、特に将来国際的な仕事をしようと考えている学生が社会人になる前に身につけるべき重要な知識です。交渉とは相手に勝つか負けるかではなく、双方の最大の利益を追求することです。友情であれ、職場での人間関係であれ、ビジネスの取引先や政治に関わることであれ、交渉により良好な関係性を築くことができます。佐藤さんがこの授業で学んだことを、学業面に限らず人生のあらゆる場面に応用し、成功を収めることを願っています!
英語版ウェブサイトでは、留学生たちの本学での留学体験記を「Student Voice」として紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。